欧州最大の製造大国であるドイツが産業低迷の泥沼に陥っている。パンデミック後の景気低迷が4年目に入る中、米国の関税政策と中国の急速な産業台頭が重なり、従来の製造競争力が揺らいでいる。さらに脱原発後のエネルギーコスト急騰で、産業全体の競争力低下が加速している。

12日(現地時間)のフィナンシャル・タイムズ(FT)によると、ドイツの製造業危機を象徴する事例は産業用加工機械メーカー「TRUMPF」だという。同社は世界金融危機以降初めて損失を計上した。売上高は1年で16%減少し43億ユーロ(約7,734億81万円)にとどまり、本社所在地のバーデン=ヴュルテンベルク州ディッツィンゲンでは地方税収が80%減少し、緊縮財政を余儀なくされた。TRUMPFのニコラ・ライビンガー=カミュラーCEOは「ドイツ産業が麻痺しているようだ」と述べた。
ドイツ産業の低迷は単なる景気循環ではなく、構造的問題だと分析されている。脱炭素化が困難な産業構造、輸出依存度、内燃機関中心の自動車産業など、かつての強みがすべて弱点に転じた。さらにドナルド・トランプ米大統領の関税政策と中国の技術台頭が重なり、輸出が急減した。今年のドイツの対米輸出は前年比7.4%減少し、中国との資本財貿易では2008年以来初めて赤字を記録した。
中国の資本財はドイツ製より平均30%安く、品質差も大幅に縮まっている。ドイツ機械工業連盟(VDMA)によると、中国の対欧州機械輸出は6年で倍増し、今年は500億ユーロ(約8兆9,943億円)に達する見込みだという。ドイツの自動車業界だけでなく、機械・金属産業全体が打撃を受け、失業率も6.3%に上昇した。
もう一つの構造的要因として、脱原発後のエネルギー供給不安が挙げられる。ドイツは2023年4月に最後の原発3基を閉鎖し、事実上原発のない国になった。しかし同年、ロシア・ウクライナ戦争により天然ガス供給が急減し、エネルギーコストが急騰、製造業の生産コスト負担が爆発的に増加した。特に鉄鋼・化学・自動車などエネルギー多消費産業が直撃を受け、一部企業は生産拠点を海外に移転した。
当時、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「脱原発決定がドイツの産業競争力の構造的弱体化を加速させた」とし、「技術・輸出中心の発展戦略がエネルギー価格の急騰により崩壊した」と指摘した。実際、ドイツの電力料金は欧州内でも高水準で、製造業者は電力費を負担できず、減産や工場移転の事例が増加している。専門家は「再生可能エネルギーへの転換は必要だが、原発の空白を補完できずエネルギー依存度が高まったことが長期的リスクになった」と評価している。
ドイツの製造業不振への解決策として、一部では「欧州第一主義」戦略の検討を求める声も上がっている。トンネル掘削機製造会社「ヘレンクネヒト」のマルティン・ヘレンクネヒト会長は「欧州も保護貿易的な産業政策を採用すべきだ」と述べた。中国の補助金競争に対抗するため、欧州内企業支援を拡大し、中国企業の市場参入を合弁投資条件付きで制限すべきだという提案も出ている。
一部では国防需要が産業部門を救う突破口になると期待されている。ドイツと西欧が防衛力強化のために数千億ユーロを投資し、防衛産業は好況を迎えた。防衛企業「ラインメタル」の株価は5年間で年平均85%上昇し、NVIDIAの収益率を上回った。しかし、防衛産業はドイツ全製造業雇用の2%未満であり、構造的な低迷を覆すには不十分だという指摘もある。
一方、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相政府は負債の上限を緩和し、今後10年間でインフラと国防に最大1兆ユーロ(約179兆8,816億円)を投資することを決定した。ゴールドマン・サックスは来年のドイツの成長率が1.4%に回復すると予想しているが、実際の現場では予算が地方自治体に十分に流れず、効果が限定的だという批判が出ている。
TRUMPF本社が位置するディッツィンゲンの財務担当官は「追加支援金は投資計画に比べ微々たるもので、すでに道路や消防署、自転車道の建設など主要プロジェクトが中断されている」と述べた。彼は「地方財政の危機は全国的な現象だ」とし、ドイツの産業低迷が地域経済全体に波及していると警告した。
















コメント0