
中国と日本が、高市早苗首相による「台湾有事」発言をめぐり緊張を高めるなか、中国中央テレビ(CCTV)は先月27日、人民解放軍が長距離ロケット発射装置を試射する映像を放映した。
ニューシスによると、香港紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)」は29日、このロケットが台湾上陸作戦を想定し、台湾周辺海域で移動する標的を攻撃できると伝えた。
頼清徳・台湾総統が日本の寿司を食べる映像を投稿して日本への支持を示し、さらに過去最大規模の国防予算案を発表した直後のタイミングで放映されたことから、中国側の示威行動との見方も出ている。
CCTVは、人民解放軍のPHL-03地上発射ロケットが「100キロ以上離れた水上目標にも脅威となる」と初めて公式に認め、艦艇への攻撃も可能だと示唆した。これまでは地上目標の攻撃用とみられていた。
CCTVは「海上目標を攻撃できれば、長距離火力の作戦領域は大きく拡大し、新たな戦術的抑止力を確立する」と強調した。
人民解放軍の長距離ロケットは、ミサイルよりもコスト効率が高いことから、台湾海峡を舞台とする潜在的軍事作戦において重要な火力として位置付けられている。
映像が放送されたのは、頼総統が台湾史上最大規模の防衛予算案を発表した直後だった。
台湾行政院は27日、2026年から8年間にわたる「防衛強靭性・非対称戦力強化プロジェクト」関連法案を可決し、1兆2,500億台湾ドル(約6兆1,800億円)規模の特別防衛予算を提示した。この中には新たな多層防空システム「Tドーム」への投資が含まれ、航空機・ドローン・ミサイルなどによる攻撃への防御力を高める狙いがある。
CCTVが公開した映像では、トラックに搭載されたPHL-03が海岸から300ミリロケットを発射し、海上に浮かぶ直径10メートルの標的に命中させる様子が映っていた。標的は海岸から150キロ離れ、敵輸送船や無人船の動きを模したものだという。
放送は、今回の試射が対艦攻撃にも応用可能であり、「数メートル以内の精度で命中できる」と報じた。
CCTVはまた、海上目標を探知・追跡するため、人民解放軍がドローンや衛星を活用して情報のリアルタイム共有やデータリンク機能を強化したとしている。横風や湿度、波浪など、海上の環境要因による誤差を補正する通信技術の改善にも言及した。
PHL-03は2004年から運用されており、数百基が配備されている人民解放軍砲兵部隊の主力火砲だ。当初は島嶼攻略作戦などで固定目標を攻撃する兵器とされてきたが、今回の内容から海上の移動目標にも射程を広げた形となる。
一方、日本の防衛省は、台湾から約110キロの与那国島に中距離地対空ミサイル部隊を配備する準備が進展していると発表した。













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