米国の終戦案に欧州も懐疑的 ウクライナ「確かな安全保障が必要」
トランプ大統領「ウクライナは提案を読んでいない」と不満 交渉は難航したまま

ウォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領は8日(現地時間)、欧州主要国の首脳と会談し、終戦交渉と戦後の安全保障策について集中的に協議した。
ゼレンスキー大統領はこの日、ロンドンのダウニング街にある英首相官邸で、キア・スターマー英首相、エマニュエル・マクロン仏大統領、フリードリヒ・メルツ独首相と約2時間半にわたり会談した。会合の主な議題は、ドナルド・トランプ米大統領の仲介で進められているウクライナ戦争終結に向けた交渉だ。米国代表団はウクライナ側、ロシア側それぞれと協議を続けているものの、立場の隔たりはなかなか縮まっていないとされる。
先週には、ウクライナ代表団が米フロリダ州で米側と協議したが、目立った打開策は見いだせなかったと伝えられている。終戦案の修正方針について、両者がどこまで歩み寄ったのかも公表されていない。トランプ大統領は7日夜、ゼレンスキー大統領が「米国側の提案をまだ読んでいない」として不満を示していた。
ゼレンスキー大統領は、欧州首脳との会談に先立ちブルームバーグ通信のインタビューに応じ、米国の終戦案の内容について、ウクライナの安全保障や東部領土問題を含むいくつかの「デリケートな争点」について、さらに詰めた議論が必要だとの認識を示した。

とりわけ「米国とロシア、ウクライナにはそれぞれの見方がある。ドンバスをめぐって一致した認識はまだない」と述べ、ロシアが東部地域全体の譲歩を迫っていることをめぐり、大きな対立が続いていると説明した。
また「すべてのウクライナ国民が答えを求めている問いが一つある。ロシアが再び戦争を仕掛けてきたとき、我々のパートナーはどう動くのかという点だ」と強調した。
ゼレンスキー大統領はSNSへの投稿でも「ウクライナにとって尊厳ある平和のかたちで、この戦争を終わらせるための努力に加わっている」と述べ、「そのためには確かな安全保障が不可欠だ」と書き込んだ。
欧州の高官の一人は、政治専門サイト「ポリティコ」欧州版に対し、領土問題に関する米側の姿勢について「考え方は単純だ。ロシアがウクライナに領土放棄を求め、米国側はそれをどう実現させるかをひたすら検討している」と語った。
欧州主要国の首脳らも、米国の終戦案に対し、欧州側との見解の違いがあることをにじませた。メルツ首相は会談の冒頭、「米国から示された文書(終戦案)の一部の詳細については懐疑的だが、そこを話し合わなければならない」と述べた。
マクロン大統領は「我々は皆、ウクライナを支持している」としたうえで、「ウクライナは今も抵抗を続けており、ロシア経済も苦境にあるなど、こちら側も多くのカードを握っている」と強調した。
一方で、ゼレンスキー大統領を含む各首脳は、トランプ大統領の機嫌を損ねないよう、発言のトーンには気を配ったとされる。領土問題といった敏感な論点で対立をあからさまにするのではなく、戦後の安全保障枠組みに議論の焦点を移す形となった。
ゼレンスキー大統領は会談の冒頭、「米国抜きではできないことがあり、欧州抜きでは成し遂げられないこともある」と述べ、双方の連携の重要性を訴えた。
会談後もX(旧ツイッター)への投稿で、「重要なのは、欧州とウクライナ、そして米国の結束だ」とし、「きょうは米国側との共同の外交努力について詳しく協議し、安全保障と復興の重要性に関する共通認識をすり合わせた」と報告した。
スターマー首相官邸は声明で、「この4年間で最も前進した局面であり、各レベルで協議が続いていることを歓迎する」と評価した。
フランス大統領府エリゼ宮も会談後の声明で、欧州とウクライナ、米国が今後も協力を続け、数日以内にさらなる意見集約が図られるとの見通しを示し、ウクライナの戦後の安全保障と復興をめぐる欧州側の取り組みを一段と強化していく考えを明らかにした。
ゼレンスキー大統領はロンドンでの協議を終えた後、ベルギーのブリュッセルに移動し、マルク・ルッテ北大西洋条約機構(NATO)事務総長、ウルズラ・フォンデアライエン欧州委員会委員長、アントニオ・コスタ欧州理事会常任議長と会談する。
欧州委員会の報道官は、ウクライナの和平努力やEUによる財政支援をめぐる議論が行われる見通しだと説明した。ゼレンスキー大統領は、9日にはイタリア・ローマでジョルジャ・メローニ首相とも会談する予定だ。
EU執行委員会の報道官は、ウクライナの平和努力とEUの財政支援問題が議論される見込みだと述べた。また9日にはローマでジョルジャ・メローニ首相と会談する予定だ。














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