ロシア、米国の仲介を利用してウクライナ東部を攻撃 … 要衝都市が陥落の危機
11月に500㎢を占領、10月の2倍
「まだ前線崩壊の段階ではない」との分析も

ウクライナの停戦案を巡り米国とウクライナの間で見解の隔たりが縮まらないなか、ロシア軍のウクライナ侵攻の速度が加速しているとの分析が浮上している。しかし、ウクライナ前線の即時崩壊を意味する段階には至っていないという見方も少なくない。
英紙テレグラフは7日(現地時間)、ウクライナの戦線地図を公開する「ディープステート」のデータを引用し、ロシア軍が先月だけで約200平方マイル(約500㎢)の領土を新たに占領したと報じた。これは、10月にロシアが占領したとされる100平方マイルの領土の約2倍にあたる。
また、米シンクタンクである戦争研究所(ISW)は、ロシアの侵攻速度が、約4年前の本格侵攻開始直後以来、最も速い水準に近づいているとの評価を示している。
こうしたなか、ロシアは5日、東部ドンバス地域(ドネツク州、ハンシク州)やノヴォロシアまで勢力を拡大する意向を明らかにした。特にドネツク州では、補給・防御の要ともされる要衝都市群への攻撃を強めているという。
ロシア軍はドネツク州の「要塞都市」スロビャンスクを視野に、近くの東部都市シヴェルシク周辺から前進を続けている。ロシア側は7日、テレグラムで、小規模浸透部隊が前線の後方にある都市の北部住民地域を掌握したと主張した。
スロビャンスクは、ウクライナ軍が掌握していたドネツク州の領土の中で二番目に大きな規模を持つ。もしこの都市が陥落すれば、ロシア軍が「要塞ベルト」と呼ばれる四都市による防衛ラインのひとつを崩せる可能性がある。
また、ドネツクの鉄道・物流の中心地だったポクロウスクは1年以上にわたる激戦を経て、陥落が目前に迫っているとされ、近隣の都市ミルノフラドは包囲される危機にある。
ロシア軍は、ウクライナ軍がポクロウスクで戦力を消耗し脆弱性が生じた南部ザポリージャ地域でも進軍を続けた。先月には、ロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長が、北東部ハルキウでも拠点都市クピャンスクを完全に占領したと発表した。
しかし、ロシアが複数地域で侵攻したとはいえ、前線が即座に崩壊することにはつながらないという意見もある。
フィンランドのブラックバード・グループの軍事分析家エミル・カステヘルミ氏はテレグラフに対し「大きな突破口はなかった。現在、ウクライナ前線が直ちに崩壊する兆しはない」と述べ「もっと大きな成果を上げなければならない。ロシアは小さな町を占領し、多くの野原を手にしただけだ」と指摘した。また、冬が始まってロシアの侵攻速度が鈍る点も変数とされる。
分析家らは、プーチン大統領が最も重視する目標である「要塞都市」クラムトルスクとスロビャンスクが強力に防衛するドンバス地域をロシアが掌握するには、なお数年かかる可能性があるとみている。
一方、停戦案の受け入れを迫る米国との協議で突破口を見いだせていないウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は8日、英国ロンドンを訪れ、キア・スターマー英首相、エマニュエル・マクロン仏大統領、フリードリヒ・メルツ独首相と会談し、欧州各国の支持を確保することに注力する予定だ。














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