ロシアの治安当局がウラジーミル・プーチン露大統領や側近らを警護する特殊監視システムの運用を一時停止していたと報じられた。AIによる情報分析能力の向上で要人暗殺のリスクが高まっていることを警戒した措置とみられている。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は8日、AIを活用して防犯カメラ映像を分析し、暗殺対象の位置を特定できる技術の存在をロシア側が把握したことが背景にあると伝えた。FTは関連記事で「新たなAI情報分析能力によってプーチン大統領がカメラを警戒するようになった」と報じている。
この技術は2月28日にイスラエル情報機関がイランの最高指導者アリー・ハメネイ師や側近らの殺害に成功した事案をきっかけに広く注目を集めた。当時、イスラエル側はAIによる映像解析と従来型の情報収集を組み合わせ、ハメネイ師や政府高官らの会合場所や日時を特定したとされる。
報道によると、イスラエルの情報機関はこの技術を利用して複雑なテヘラン市内の地形を地図化し、高官警護チームの行動パターンも分析したという。数千台の交通監視カメラが記録した膨大な映像から対象者を抽出し、別ルートで収集した情報と照合することで会合の日時を割り出したとされる。
各国政府は以前から、防犯カメラが高度な技術を持つハッカーや外国情報機関に侵入される可能性を認識していた。しかし、近年の技術は単なる映像閲覧の段階を大きく超えているとされる。AIが膨大な映像データから特定の行動やパターンを抽出する能力を獲得したことで、これまで人間だけでは不可能だった分析が可能になった。
FTは、この分野に詳しい関係者の話として、AIによる映像分析能力が2023年頃に大幅に向上し、その後も急速な進化を遂げたと伝えた。顔認識や銃器検知、車両ナンバー追跡などを可能にした従来の機械学習技術よりも格段に高度だという。
最大の違いは「検索方法」にある。従来型のシステムはあらかじめ設定された条件でしか検索できなかったが、新しい技術では自然言語による検索が可能になった。「バッグを受け渡す2人の男性」「外見を変えた人物」「1日に何度も着替えた人物」「最近塗装された車両」「短時間に同じ地点を何度も通過した車両」といった条件を自然言語で指定し、該当する映像を抽出できるという。
この技術を自国で活用しているという欧州政府関係者はFTに対し「我々は物体ではなく行動を探せるようになった。新たな可能性が開かれた」と語った。
イスラエルのスタートアップ企業Contourのマタン・ゴールドナーCEOは「コンピューターが認識する映像情報について、人間が自然言語でコンピューターと対話できるようになったのは歴史上初めてだ」と述べた。
さらに「敵の情報源を監視する能力自体は新しいものではないが、数千時間、数千本の映像の中から求めていた瞬間を正確に見つけ出せることは画期的だ」と強調した。
FTによると、こうした脅威を意識したロシア治安当局はプーチン大統領の警護用監視システムが敵対国に悪用される可能性を防ぐため、一時的に稼働を停止した。その後、システムがインターネットから完全に切り離されていることを技術者が確認したうえで再稼働させたとされる。
FTはこの種の技術を保有する国として米国、イギリス、イスラエルなどを挙げ、中国も関連技術への投資や導入を進めていると伝えた。
















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