
現地時間5日未明、ホワイトハウスが突如として公開した国家安全保障戦略(NSS)の余波が広がっている。全29ページに及ぶ当該文書には様々な内容が盛り込まれているものの、一言で要約するならば「アメリカ大陸への選択と集中」という方針が読み取れる。欧州から関与を縮小するかに見える米国の姿勢に対し、ロシアは「概ね、我々のビジョンと一致する」として、歓迎の意を示した。
NSSを分析すると、トランプ政権は「国家利益の明確な定義」の項目において、「全てに集中するということは、何にも集中していないのと同義だ」と述べ、「米国の中核的な国家安全保障上の利益こそが、我々の焦点となるべきだ」と強調した。冷戦終結以降、米国政権は世界のあらゆる問題に関与すべきだという政策基調を維持してきたが、今後は徹底して米国のみに焦点を当てる姿勢へ転換するとの意味合いと受け取れる。これについて、外交筋の一部からは、「米国の力がかつてほどではなくなったことを示している」との見方も出ている。
トランプ大統領の残り3年間の外交・安全保障の指針となるNSSは、「これまでのこうした文書(NSS)では、全ての地域や問題に言及するのが慣例となり、その結果、文書は肥大化し、焦点も散漫になっていた」と批判した。その上で、「我々は世界の全ての地域と問題に等しく注意を払える余裕はない」として、選択と集中の方針を明確に打ち出した。
今回のNSSでは、2017年版および2022年版で言及されていた「北朝鮮」が一度も触れられていない。この点と関連づけると、北朝鮮はもはや米国が最優先で対処すべき脅威ではなく、その対応は韓国が担うべきだとの意味合いにも解釈される。
NSSはさらに、最初の重点地域として西半球(アメリカ大陸)を挙げた。文書では、「モンロー・ドクトリン(欧州への不干渉とアメリカ大陸における米国の影響力強化)を実行し、西半球における米国の優位性を回復する」と強調している。中南米からの不法移民やフェンタニルなどの麻薬を徹底的に遮断し、加えて中南米で親米的な政権が誕生するよう後押しすることで、世界全体ではなく米国内の安定確保に集中する狙いがある。また、「西半球における緊急の脅威に対処するため、世界的な軍事プレゼンスを再調整する」とも明記した。
欧州については、「文明の消滅」に直面していると警告し、全体として米国の関与を縮小する方針を示した。モンロー・ドクトリン自体が欧州大陸への米国の不干渉を意味しており、NSSでは特に「欧州が自国防衛の主要な責任を担うようにする」ことを政策目標として掲げた。また、ロシアとは戦略的な安定関係を再構築する方針も強調されている。
これに対し、ロシア大統領府(クレムリン)のドミトリー・ペスコフ報道官は7日、「我々が見ている米国の(政策)調整は、多くの点で我々のビジョンと一致している」と述べた。「ロイター通信」の報道によると、「米国とロシアが世界政治の地殻変動について、これほど完全な形で公開の合意を示すのは異例だ」と評価された。外交筋では、今回のNSSを巡り、トランプ大統領の「マフィア的」な側面が表れたとの見方も出ている。マフィアの特徴とは、互いの縄張りを明確に線引きし、その内部では相手の影響力を認め合う点にある。トランプ政権が、アメリカ大陸という自らの領域を明確に守る姿勢を示す一方、欧州やアジアでは相対的に関与を弱め、ロシアや中国に一定の余地を与えたとの分析が示されている。
さらに、ロシアを引き込み、中国を牽制する狙いがある可能性も指摘された。「ロイター通信」によると、トランプ大統領は3月にフォックスニュースのインタビューで「歴史を振り返ってみると、最初に学んだのはロシアと中国が一体化することを望まないということだ」と語っていた。















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