
ドナルド・トランプ政権の外交政策は大統領のごく少数の最側近によって主導されていると、米政治専門メディア「ポリティコ」が7日(現地時間)報じた。
ロシアや中東をめぐる既存の主要外交課題に加え、ベネズエラへの軍事的打撃の可能性まで検討範囲が広がる中、少数側近への依存が「両刃の剣」になり得るとの懸念が浮上している。
ポリティコによると、この側近グループにはトランプ大統領の長年の不動産ビジネスの友人であるスティーブ・ウィットコフ大統領中東特使をはじめ、マルコ・ルビオ国務長官、J.D.ヴァンス副大統領、ピート・ヘグセス国防長官、スージー・サマーオール・ワイルズ大統領首席補佐官らが名を連ねている。
匿名を求めたホワイトハウス関係者は、トランプ大統領が必要に応じてこの側近グループを即座に招集し、会議を開いたうえで迅速に判断を下していると説明した。そのうえで、このグループ内で誰がどの役割を担うかは「すべて大統領次第だ」と述べた。
この関係者によれば、外交案件は主にルビオ長官、ワイルズ首席補佐官、ヴァンス副大統領が管理し、トランプ大統領と協議する体制になっているという。ヘグセス長官も軍事関連の最重要会議に参加しているとされる。
別のホワイトハウス関係者は、先月発表されたウクライナ戦争終結に向けた28項目の平和案について、ウィットコフ特使と、トランプ大統領の義理の息子であるジャレッド・クシュナーが草案を作成したと明らかにした。この計画の協議段階では、ヴァンス副大統領とルビオ長官が議会への説明役を務めたという。
トランプ政権は、大統領が信頼する少数の側近を通じて政策決定を行うことで機動力が高まり、官僚主義が薄れる分だけ情報漏洩のリスクも下がるとみている。
一方で、外交問題において各国との交渉チャンネルが一貫しないことが、問題解決の妨げとなり得るとの指摘もある。
一例として、ウクライナ問題では、ここ数カ月にわたりキース・ケロッグ特使がウクライナ側と接触し、ロシア側とのコミュニケーションはウィットコフ特使とクシュナー氏が担当してきた。
これについて、リチャード・ハース前米外交問題評議会(CFR)会長は「複数の人物が独立して交渉を進める状況は極めて危険だ」とポリティコに語った。また「すべての当事者に何を伝えたのかを完全に把握し、各側に何を言うかを判断し、その過程で生じる利害の衝突を調整できるひとりの担当者がいる方がはるかに良い」と付け加えた。
さらにポリティコは、大統領に多様な視点を提供するホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)など、従来の仕組みが弱体化している点も懸念材料だと指摘した。
トランプ第2期政権が発足した今年に入り、NSCの職員は数百人規模で削減され、一部のNSC委員会も廃止された。また、NSCを統括していたマイク・ウォルツ前大統領補佐官(国家安全保障担当)が、民間チャットアプリを使って軍事作戦を協議していた問題の責任を取り辞任し、5月以降はルビオ国務長官が国家安全保障担当大統領補佐官を兼務している。
民主党政権で勤務していた前NSC高官は、「NSCの役割の一つは、さまざまな利害関係者を集め、『Xという問題は検討したのか、Yというリスクは考慮したのか』といった意見を吸い上げることだ」と述べ、「しかし、今の政権はそうした指摘を聞きたくないように見える」と批判した。
また、トランプ大統領や側近と個人的なつながりをもつイスラエルや湾岸諸国の一部の首脳・外交官が、ホワイトハウスの意思決定プロセスに高いアクセスを持つ一方で、その他の国の関係者はそうではない点も問題として挙げられている。
バラク・オバマ政権で北大西洋条約機構(NATO)大使を務めたアイヴォ・ダールダー氏は、「トランプ流のウクライナ戦争終結アプローチが混乱に満ちていることに、驚く必要はない」と指摘した。そのうえで、「政策を練り上げ、指針を示し、外国政府と意思疎通を図り、明確な方向性を打ち出すための実質的なプロセスが欠如していると、こうした事態が起きる」と述べた。















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