1万分の1の確率で脳の大部分が欠損して生まれた女性、
20年生存の奇跡 「すべて分かっています」

米ネブラスカ州で、脳の大部分を欠いて生まれた女性が家族の介護を受けながら20年間生存した。
7日(現地時間)、ABCニュース系列局KETVによると、オマハ在住のアレックス・シンプソンが4日に20歳の誕生日を迎えた。シンプソンは生後2カ月で水頭無脳症と診断された。
水頭無脳症は大脳半球の大部分が欠損し、その空間が脳脊髄液で満たされる先天性疾患で、発症例は極めてまれとされる。
頭蓋骨や頭皮は形成されるが、実際に存在するのは脳幹や小脳など生命維持に必要な一部の構造のみで、重度の脳奇形に分類される。
世界的な発生率は1万人未満とされ、根本的な治療法はなく、多くは生後1年以内に死亡する。

水頭無脳症の患者は、生存しても難治性けいれんなどの合併症や重度の神経障害を抱える場合が多く、医療的支援なしでの生存は極めて困難とされる。
シンプソンについても、当初は長期の生存は見込めないと診断された。両親によると「娘の脳には小指の半分ほどの小脳しか残っていないと説明を受けた。医師からは4歳を超えて生存するのは困難だと告げられた」と話した。
予測に反して、シンプソンは家族の介護を受けながら数年を生き延び、4日に20歳の誕生日を迎えた。
家族は生存の背景に信仰と家族の支えを挙げた。両親は「20年前は恐れしかなかったが、信仰が私たち家族の生きる力となった。認知機能を担う脳がなくても、娘は私たちの存在を感じ取っている。先ほど娘のもとを訪ねた際も、私を探すような様子を見せた」と語った。
シンプソンの14歳の弟も「姉は周囲の状況を感じている。家族について聞かれると、最初に障害のある姉のことを話す」と述べた。
2008年、世界最長の水頭無脳症生存患者を報告
水頭無脳症患者がシンプソンのように20年以上生存する例は極めてまれである。
2013年にイタリアの研究チームが発表した症例報告では、32歳まで生存した患者の記録が確認されているにとどまった。
また、2008年には韓国の仁済大学海雲台白病院の医療チームが22歳6カ月の女性患者の症例を報告し、当時「世界で最も長く生存した水頭無脳症患者」として記録された。
患者は出生直後に両親に遺棄され公立小児病院と養護施設で保護を受けた後、褥瘡の治療を目的に入院した。コンピュータ断層撮影(CT)検査で大脳半球の大部分が欠損し、その空間が脳脊髄液で満たされていることが確認された。
音や痛みの刺激に反応して目を開けるなどの動きはみられたが、意識的な反応は認められなかったと報告された。
妊娠12週以降の脳血管障害が主因

一方、水頭無脳症の主因は妊娠中期以降に発生する広範な脳梗塞とされる。胎児の脳へ向かう主要血管が閉塞し、脳組織が壊死してその空間を脳脊髄液が満たす。
このほか、子宮内感染(トキソプラズマ、サイトメガロウイルスなど)や重度の低酸素症、まれに遺伝的要因も原因として挙げられるが、多くの場合、正確な発症要因の特定は難しいとされる。
水頭無脳症の新生児は、出生直後には外見上、正常に見える場合がある。吸啜や嚥下などの原始反射がみられ、泣き声を上げることもあるが、時間の経過とともに発達の遅れが顕著となり、意識的な反応はほとんど示さなくなる。

主な症状は、重度の発達障害 、けいれん発作 、視覚・聴覚障害 、体温調節障害 、成長不良などである。特にけいれんは多くの患者にみられ、薬物による制御が難しい場合が多い。
根本的な治療法はなく、早期発見が重要とされる。診断は主に妊娠中の超音波検査やMRIで行われ、大脳半球の位置に脳脊髄液のみが充満している特徴的な画像所見が確認される。
類似疾患である重度の水頭症との鑑別が重要とされる。水頭症は脳組織が脳脊髄液の圧力で圧迫されて薄くなる状態であり、脳組織自体が欠損する水頭無脳症とは異なる。
現時点で水頭無脳症に対する根本的な治療法はなく、医療チームはけいれんの抑制、栄養管理、感染予防などの対症療法に重点を置いている。
このため、専門家は妊娠中の定期的な産前検診による早期発見の重要性を指摘する。特に妊娠中期の精密超音波検査で異常が確認された場合、MRIによる追加検査で正確な診断を受けることが必要とされる。













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