
米国に居住する70代の男性が、若かりし頃に愛用していたアストンマーティンDB5を新車同然にまで復元することに成功した。世界に現存するのはわずか39台のみとされる希少モデルであり、その評価額は約100万ポンド(約1億9,000万円)に達すると見られている。
アストンマーティンは、1960年代に人気を博した映画『007』シリーズにおいて、主人公ジェームズ・ボンドの愛車として登場したことで知られる。中でもDB5は、映画『007/ゴールドフィンガー』(1964年)や『007/サンダーボール作戦』(1965年)に登場し、ボンドカーの象徴的存在とされてきた。

英フリントシャー州モールド在住のジョン・ウィリアムズ氏(71歳)は、幼少期からアストンマーティンに憧れ、資金を貯め続けた結果、1973年、19歳のときに念願のDB5(シルバーバーチ色)を購入した。
しかしその後、中東で働くことになり、過酷な高温・乾燥の気候に長期間晒されたことで塗装が傷み、周囲の子どもたちがボンネットの上で遊ぶなどした結果、車体は次第に荒廃し、まるで廃車同然の状態となっていった。

やがて走行不能となったものの、車両としての価値は失われていなかった。1963年から1965年にかけて生産されたDB5はわずか1,022台に過ぎず、ウィリアムズ氏の所有車はその中でも希少なヴィンテージ仕様で、現存数は世界で39台のみである。このため、劣化した状態でも推定50万ポンド(約9,500万円)の価値があるとされていた。
さらなる価値向上を見込んだウィリアムズ氏は修復を決断し、約3年間、作業時間にして2,500時間をかけて錆を除去し、部品を交換した。徹底的なレストアの結果、鑑定額は約100万ポンドまで引き上げられた。
アストンマーティン専門家のスティーブ・ワディンガム氏は、「新車を一から造る方が簡単と思えるほど、腐食が進んだ車を修復するには途方もない技術と忍耐力が求められる」と評した。さらに、「香り、感触、エンジン音、全てが圧倒的であり、まるで名作映画の世界に入り込んだかのような特別な体験だ」と語っている。
ウィリアムズ氏は「納車当時より、今のほうが遥かに素晴らしい」と喜びを述べ、「この車に乗ると、27歳だった頃の自分に戻ったような気持ちになる」と感慨を明かした。














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