

グリーンランド西部の小さな島、イナールスイート村の海岸に、巨大な氷山が異常接近している。海岸からの距離はわずか1メートル。にもかかわらず、1週間以上もその場に留まり続けている。
人口わずか170人ほどのこの漁村に、当局は警戒令を発令。主要施設は一時的に閉鎖され、住民には「氷山に近づかないように」との注意が呼びかけられた。現地当局は「氷山が岸に衝突したり崩れれば、津波のような波が発生し、構造物や人に被害を及ぼす可能性がある」と警鐘を鳴らす。
実際、専門家たちは「氷の塊そのものが地面に落ちる危険性は低い」としながらも、「海面の変動による激しい波が、一帯を襲うおそれがある」と指摘する。こうした波は低地の建物や、すでに劣化した施設を一気に押し流してしまう可能性もあるという。
村では魚加工場などの小規模事業所がすでに閉鎖された。写真家として活動する住民デニス・レフトネンは「公式な警告が出され、私が働く工場も停止した」と話す。一方で「すべての村民が警戒しているわけではない。心配する人もいるが、私のようにワクワクしている人もいる」と笑った。
氷山がこの村を脅かすのは今回が初めてではない。2018年にも約11トン級の氷山が接近し、住民が一時避難を余儀なくされた。強風に押し戻される形で氷山は数日後に遠ざかり、事なきを得た。
海とともに暮らすこの村にとって、自然の脅威は日常の一部。しかしそれでも、突如現れる「白い巨影」には、畏れと驚きが交錯する。
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