ドナルド・トランプ米大統領が、核潜水艦を再配備した事実に言及し、ロシアに警告のメッセージを発した。核兵器の発射手段の中でも最も秘匿性が高く、抑止力の象徴とされる戦略原潜の存在を大統領自ら公にするのは異例であり、軍事的なシグナルにとどまらず外交的圧力としての意味合いも持つとみられる。

6日(現地時間)、『フォックス・ニュース』などによると、トランプ大統領は記者会見で、「しかるべき海域にすでに潜水艦を配備した」と述べ、具体的な位置には触れなかったものの、ロシア近海を示唆する発言を行った。この発言は、ロシアのドミトリー・メドベージェフ国家安全保障会議副議長が核使用の可能性に言及した直後に出されたものだという。メドベージェフ氏は、米国のロシアに対する制裁を「最終通告」と非難し、旧ソ連時代の核報復システム「デッドハンド」にまで言及するなど、核による威嚇を強めていた。
軍事専門家らは、トランプ大統領の発言は新たな戦力投入というよりも、すでに配備された戦力を利用した戦略的メッセージだと分析している。米海軍潜水艦司令官を務めたマイク・コナー氏は「敵対勢力は米国の原潜が展開していることを認識しているが、大統領がその存在をあらためて示すことで抑止効果が強まる」と述べ、「新事実の公表ではなく、位置情報が明かされていない以上、戦略的曖昧性は保たれている」と評価した。
また、米海軍戦略顧問を務めたジーン・モラン氏も「潜水艦の配備は通常非公開であり、大統領が言及するのは極めて珍しい」と指摘した上で、「潜水艦は追跡困難な兵器であるがゆえに、その存在を示すこと自体が心理的抑止力として機能する」と述べた。
一部では、米国が新たな潜水艦が実際に派遣したのではなく、既存の配備範囲を調整したにすぎないとの見方もある。米戦略国際問題研究所(CSIS)のマーク・キャンシアン上級顧問は「米軍は常時10隻以上の戦略原潜を運用しており、今回の動きも内部的な再配置である可能性が高い」と分析した。
トランプ大統領が今回、戦略兵器の存在に自ら言及した背景には、外交的圧力の狙いもあるとみられる。ウクライナ戦争を巡る和平交渉が膠着し、ロシアが和平合意の締結を先送りする中、米国として軍事的圧力を強めることで、ロシアを交渉の場に復帰させることを意図しているとする見方もある。
ハドソン研究所のブライアン・クラーク国防センター長は「トランプ大統領はロシアの繰り返される核の脅威に対抗し、最大限の抑止効果を狙っている」とした上で、「潜水艦の存在に公然と言及するだけでも、十分な戦略的圧力となる」と述べた。
一方で、このような公開発言が不必要な緊張を招く可能性も指摘されている。軍事専門家のマシュー・シューメーカー氏は「潜水艦は本来、秘匿性を重視する兵器であり、それを公にするのは作戦目的というより政治的メッセージだ」とし、「双方が軍事力を誇示する中、偶発的な衝突のリスクも無視できない」と警鐘を鳴らした。
米国は過去にもロシアの軍事的挑発に対し、同様の方法で対応したことがある。昨年、ロシアがキューバ近海に軍艦を展開した際、米軍はグアンタナモ湾で潜水艦を水面上に浮上させ、対抗措置を講じた。
軍事専門家らは、今回の措置について「単なる軍事行動にとどまらず、ロシアへの強い外交的メッセージであり、今後の米国とロシアの関係を左右する分岐点となる可能性がある」と分析している。
注目の記事