ウクライナがロシア国内の製油施設に対する攻撃を強める中、ロシア各地で燃料不足が深刻化している。複数の地域でガソリンの品切れが相次ぎ、価格も過去最高水準に急騰したことを受け、ロシア政府はガソリン輸出禁止措置を1カ月延長すると発表した。
英紙『ガーディアン』は27日(現地時間)、ウクライナによるエネルギー関連インフラへのドローン攻撃により、ロシア全土で燃料不足が顕著になっていると報じた。

ロシアで最も一般いんされるA-95ガソリンの卸売価格は、先週1トン当たり約8万2,300ルーブル(約15万円)に達し、1月比でほぼ54%高い過去最高水準を記録した。極東や南部、クリミア半島など地方では供給が滞り、より高価な高級燃料を使用せざるを得ない状況に陥っている。
専門家によれば、ウクライナによる一連いんロシア全体の製油能力の少なくとも17%、日量約110万バレル相当が打撃を受けたと推計される。ウクライナは今月2日から24日にかけ、ロシアの石油インフラを約12回攻撃しており、その多くは南西部のリャザン・ヴォルゴグラード地域の施設を標的にした。27日にも、モスクワへの供給を担う主要パイプライン「リャザン‐モスクワ油送管」で大規模な爆発が発生したと地元メディアは伝えている。
石油・ガスアナリストのボリス・アロンスタイン氏は「戦時中や戦後に燃料不足は過去にもあったが、今回は製油所や貯蔵施設を狙ったドローンによる集中的な攻撃で、近年で最も深刻な危機だ」と指摘。「攻撃が大規模かつ体系的で繰り返されており、施設が被害を修復する時間すら与えられていない」と述べた。
『ガーディアン』は、ロシアの製油システムが輸出向け製品中心に設計されてきたことが、今回の危機を招いた一因だと指摘した。国内のガソリン生産に余裕がほとんどなく、わずかな混乱にも脆弱だと分析されている。さらに、制裁の影響で西側技術へのアクセスが遮断され、復旧の遅れが燃料不足を一層悪化させているという。
ロシア政府は27日、ガソリン輸出禁止措置を9月30日まで延長すると発表。「国内燃料市場の安定を確保するための決定だ」と説明した。ロシアは7月にも国内需要急増を受けて輸出規制を強化していた。
一方、専門家は今回の燃料不足が当面、戦争遂行や重工業に致命的な影響を与える可能性は低いとの見方を示した。産業用車両や軍装備の大半はガソリンではなくディーゼルで稼働しており、ディーゼル燃料はなお余剰があるためだ。カーネギー・ロシア・ユーラシアセンターのセルゲイ・バクレンコ上席研究員は「運輸、農業、産業、そして軍が深刻な燃料不足に直面するには、なお一定の隔たりがある」と分析した。
しかし、ウクライナの攻撃が止む気配はなく、この燃料危機が冬まで続く恐れがあるとの見方もある。バクレンコ氏は「最悪の場合、当局がガソリンの配給制を導入する可能性もある」と指摘した。
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