
ロシアとベラルーシが参加する大規模軍事演習「ザパド2025」が実施され、欧州の安全保障環境を巡る緊張が高まっている。
15日(現地時間)、ベラルーシ中部ボリソフ訓練場では、ロシアとベラルーシの合同部隊による戦闘訓練が行われた。Su-35戦闘機が低空で爆撃を行い、Mi-35攻撃ヘリが急降下してミサイルを発射した。ドローンが戦場上空を飛び交う中、迷彩を施した戦車部隊が川を渡り敵陣を制圧する場面も再現された。
ロシアは今月上旬、ポーランドやルーマニアにドローンを飛ばした直後に西側諸国を想定した「戦争シミュレーション」演習を展開し、NATO加盟国との対立を一層高めている。NATO各国は東欧の国境地帯に兵力や主力戦闘機を増派するなど警戒を強めている。
AFP通信やル・フィガロ紙によれば、「ザパド2025」演習は12日から16日にかけてベラルーシ、北極圏近くのバレンツ海、さらにリトアニアとポーランドの間に位置するロシア飛び地カリーニングラードなどで実施された。2009年から4年ごとに行われてきた「ザパド」は、2022年2月のウクライナ侵攻以降では初めての開催となる。
今回の演習には、ベラルーシ軍約6,000人、ロシア軍約1,000人の計7,000人が参加し、奪われた陣地を奪還するなど、西側部隊を模した仮想敵との交戦を想定した内容の訓練を行った。バレンツ海では、ロシア海軍のフリゲート艦「ゴロフコ」が極超音速ミサイル「ジルコン」(最高速度マッハ9、時速約1万1000キロ)を発射した。
リトアニアのドビレ・シャカリエネ国防相はDPA通信に対し、「ロシアはウクライナ戦争で苦境に立たされながらも、追加動員の能力を誇示し、軍事力を発展させていることを示そうとしている」と指摘した。
ロシアとベラルーシ側は今回の演習について「自国防衛が目的」と説明している。ベラルーシのヴィクトル・フレニン国防相は「NATOを脅かすとか、バルト3国(リトアニア・エストニア・ラトビア)を侵攻するなどといわれているが、全て根拠のない話だ。我々は自国を守るために備えているだけだ」と述べた。ただしBBCは、2022年の合同演習終了直後にロシア軍がベラルーシ領からウクライナへ侵攻した経緯を指摘している。
今回は異例にも23か国の軍関係者や約100人の記者に公開され、ベトナム、スーダン、ラオスといったロシアの友好国に加え、米空軍の駐在武官も視察した。フレニン国防相は米軍関係者に「招待に応じてくれて感謝する。我々は何も隠していない。緊張を和らげたい」と語ったという。
一方で、ロシアのドローンが今月10日にNATO加盟国であるポーランド領空に19機侵入した直後の演習実施に、欧州各国では警戒感が強まっている。ポーランドは「ザパド2025」演習に合わせ、ベラルーシ国境に4万人の兵力をを配備して対応した。ポーランドのカロル・ナブロツキ大統領はドイツ紙ビルトとのインタビューで「ロシアのドローン侵入はプーチン大統領の力を誇示するデモンストレーションだった」と語った。
英国防省は近くポーランドに主力戦闘機タイフーンを派遣すると発表した。フランスもすでにラファール戦闘機3機をポーランドに送ると表明している。
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