
現代戦の様相を一変させる「ドローン(無人機)戦術」に対抗する新たな兵器システムが登場した。ニューヨーク・タイムズ(NYT)やニュー・アトラス(New Atlas)、ネクストジェン・ディフェンス(NextGen Defense)などは、オーストラリアの防衛技術企業「エレクトロオプティック・システム・ホールディング(EOS)」が、北大西洋条約機構(NATO)加盟国と高エネルギーレーザー兵器「アポロ(Apollo)」の購入契約を締結したと報道した。EOSによれば、アポロはドローン対策に特化した最新技術を結集した指向性エネルギー兵器だという。
アポロは強力な出力と拡張性を持つ。100キロワット(kW)級の高出力レーザー(最大150kWまで拡張可能)を搭載し、クアッドコプターの小型ドローンから600kgに及ぶ大型無人機まで(グループ1〜3)撃墜が可能だ。また、垂直方向を含む360度全方位での防御が可能で、標的に向けて700ミリ秒(ms)で60度旋回するなど、迅速な対応能力を備えている。これにより、1分間に20機以上の小型ドローン(グループ1)を撃墜できる。
しかも、最大3km圏内のドローンを直接破壊できる射程を持ち、最大15km以内に接近するドローンの光学センサーを無力化する「ソフトキル」能力も備えている。また、外部電源が供給されれば事実上無制限に発射可能だが、さらに注目すべき特徴は内部電源供給装置だ。これにより、外部電源が遮断された状態でも予備電力が尽きるまで最大200回の交戦が可能だとEOSは説明している。
アポロは約6mのコンテナに搭載され迅速な再配置が可能で、車両搭載型も運用できる。NATOの指揮・統制および統合防空システム(C2・IADS)システムとも完全に統合運用できるよう設計されており、連合作戦にも適している。

アポロが注目を集めているのは、近年の戦争の様相が急速に変化しているためだ。ウクライナ戦争やイスラエル・ハマス紛争で明らかになったように、現代戦においてドローンは不可欠な主要戦力になっている。ドローンはますます小型化し、低コストで高性能化している。特に群れをなして攻撃する「ドローン・スウォーム」戦術は、既存の防空網を無力化する新たな脅威として浮上している。
このようなドローン攻撃は迅速で予測が困難なため、従来のミサイル防衛システムでは対応に限界がある。さらに、既存の兵器システムで安価なドローンに対応することは極めて非効率的だ。13日(現地時間)、ポーランドは領空を侵犯したロシアのドローンの脅威に対してF-16戦闘機を出撃させた。ルーマニアも自国領空に侵入したロシアのドローンを監視するためにF-16戦闘機を発進させた。
しかし、実際に撃墜された一部のドローンは合板とスチロールで作られた「ゲルベラ」ドローンだったことが判明した。爆弾を搭載していない防空網攪乱用の「おとり」ドローンだった。「殻」だけの安価なドローンに対抗するために、数百万ドル相当の防空システムを動員していたことになる。

これに対し、EOSのアポロのようなレーザー兵器は1発あたりのコストが10セント(約14円)にも満たない。数百、数千の安価なドローンを撃墜するために高価な迎撃ミサイルを発射したり、最新鋭の戦闘機を出撃させたりする必要がない。
EOSを率いるアンドレアス・シュヴェア博士(Andreas Schwer)はニュー・アトラスとのインタビューで「ドローン軍団の攻撃を経済的なコストで防御する必要があるという緊急の市場需要と、新たに浮上する戦略的要件を満たすために高エネルギーレーザー兵器を開発した」と述べ、「需要が急増しているため、兵器能力を向上させるために数年間投資を続けてきた」と語った。
ただし、レーザー兵器にも限界はある。雨天や霧の気象条件下では精度や攻撃効率が低下する可能性がある。また、現存するほとんどのレーザー兵器システムは弾道ミサイルを阻止するだけの射程や出力が不足しているというのが専門家らの指摘である。
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