
米国のドナルド・トランプ大統領は、今夏のウクライナ戦争及びガザ問題を巡る積極外交を終えた後、最近は国内問題に注力している。ロシアによる相次ぐ挑発に対しても消極的な対応を取っており、欧州外交界では不安が高まっている。
ロイター通信は20日(現地時間)、米戦争省(旧国防総省)高官が先月末の欧州外交官との会合において「米国はラトビア、リトアニア、エストニアへの一部安全保障支援を中止する。欧州は米国依存度を下げるべきだ。」と伝えたと報じた。

欧州の外交官らは、この方針がロシアのウラジーミル・プーチン大統領をさらに大胆にさせる可能性があることを懸念している。その懸念は現実のものとなった。同日、ロシアのMiG-31戦闘機3機がエストニア領空を約10分間侵入した。北大西洋条約機構(NATO)はエストニアに配備されたイタリア空軍のF-35戦闘機を即時出撃させた。
続いて、バルト海に位置するポーランドの国営エネルギー企業「ペトロバルティック」が運営する石油プラットフォーム周辺の安全区域に、ロシア戦闘機2機が侵入したとポーランド当局が発表した。9~10日の夜にはロシアのドローン(無人機)がポーランド領空に侵入し、NATO戦闘機が迎撃に出動した。

トランプ大統領はこの日、エストニア領空侵犯について記者団に「大きな問題になり得る」と一言述べただけであった。ポーランドでのドローン事件の際も、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「始まったようだ(Here we go!)」と投稿するのみだった。ロイター通信は「この反応は、トランプ大統領が最近外交の舞台から一歩引いていることを示している」と分析した。
英紙インディペンデントも同日、「トランプ大統領はロシアの対欧挑発に対し事実上沈黙を守っている」と指摘した。また、「エストニア領空侵犯とポーランドのドローン事件はNATOの安全保障に対する直接的な脅威だが、トランプ大統領の対応は曖昧で遅い」とし、欧州内の不信感が高まっていることを伝えた。
トランプ大統領は今年夏までは強硬な対外政策を維持していた。6月にはイランの核施設を爆撃してイスラエルを支援し、同月開催のオランダでのNATO会議ではウクライナへのパトリオットミサイル防衛システム追加支援を約束した。7月にはロシア産原油の購買国に対する制裁と関税強化を示唆した。しかし、米アラスカでプーチン大統領との首脳会談は成果なく終わり、その後「ウクライナの停戦は平和の前提条件ではない」と述べ、欧州との見解の相違を露呈した。以降は犯罪対策、ビザ制度改革、過激左翼への対応など国内問題に焦点を当てている。

専門家らは、米国の消極的な対応がロシアの更なる大胆な行動を招く可能性があると警告している。米アトランティック・カウンシルのアレックス・プリツァス上級研究員は「米国が後退すれば、プーチン大統領はより挑発的に行動するだろう」と述べた。外交筋からは「トランプ大統領が再び強硬姿勢に転じても、信頼性を失うだけだ」との批判も上がっている。
外交専門家はトランプ大統領を「予測困難な指導者」と評している。彼は撤退の意向を示したかと思えば、再び前面に出るという行動を繰り返している。最近では、米国とNATOの共同安全保障支援プログラム「PURL」を通じて一部の武器がウクライナに流れ込んでおり、完全な「外交後退」とは言い切れない。しかし、9月に入りエストニアやポーランドの領空に対する脅威事案が続き、トランプ大統領が「欧州は自ら安全を確保すべきだ」というメッセージを強めたことで、NATO内部の不安感は一層高まっている。
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