中国、WTO「途上国」地位を放棄 米国の不満和らげ貿易交渉で新局面か
トランプ政権の圧力から6年、関税引き下げなど150超の特典を返上
李強首相「今後の交渉で特別待遇は求めない」
「自由貿易の守護者」としての立場強化を狙う
「特典放棄・地位維持」という二重戦略の可能性も

中国が世界貿易機関(WTO)加盟から24年を経て、自ら「開発途上国(途上国)」としての特典を手放した。2019年にトランプ米政権が「中国は途上国特権を利用して最大の輸出国となった」と批判し、地位の放棄を求めてから6年ぶりの動きとなる。米国との貿易交渉を見据えた戦略との見方があり、今後はインドやサウジアラビアなど経済規模の大きい国々にも、同様の圧力が強まる可能性が指摘される。
李強首相は23日(現地時間)、米ニューヨークの国連本部で開かれた世界開発構想(GDI)ハイレベル会合で、「中国は責任ある途上国として、今後のWTO交渉で新たな特別待遇を求めない」と表明した。
この発言は、2019年以降トランプ政権が示してきた「中国が途上国地位を利用して他の加盟国に不利益を与えている」とする米側の不満を和らげ、貿易協議で有利な立場を確保する狙いがあるとみられる。同時に、多国間主義を掲げてきた大国として「決断」を示し、国際的イメージを高める思惑もうかがえる。中国は途上国特典を放棄する代わりに、「自由貿易の擁護者」としての立場を強調する構えだ。
中国が放棄する途上国特典には、セーフガード(緊急輸入制限)の緩和適用、関税引き下げ、輸出補助金の利用など150以上が含まれる。途上国地位は各国が自主的に申告する仕組みで、韓国も2019年、トランプ大統領の圧力を受けて特典を返上している。
一方、中国が地位を放棄した背景にはWTO体制の事実上の機能不全もある。米国は多国間貿易体制よりも関税中心の二国間交渉を強化しており、ウェンディ・カトラー元USTR(米通商代表部)副代表は「中国の発表は数年遅れだ」と述べ、「WTO改革の遅れや交渉力不足を踏まえると、実質的な効果はほとんどない」と指摘している。
さらに、中国は「特典は放棄するが地位は維持する」という「二重戦略」を取る可能性もある。中国商務部の韓勇・WTO局長は「特別待遇を受ける資格はないが、途上国としての地位は変わらない」と主張した。先進国に分類されれば、国連気候交渉での資金拠出義務が増すため、中国は「特典は返上しつつ地位は維持する」ことで負担増を避ける狙いとみられている。
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