
米国防総省が策定を進めている新たな「国家防衛戦略(NDS)」について、ダン・ケイン統合参謀本部議長ら米軍首脳部が懸念を示していることが分かった。29日の米紙『ワシントン・ポスト(WP)』が複数の関係筋の話として報じた。
同紙によれば、ピート・ヘグセス国防長官の指示で作成されているNDS改定案は、欧州やアジアでの軍事的プレゼンスを縮小し、米本土防衛への集中を強調する内容となっている。中国に関しても、台湾侵攻の脅威に重点が置かれており、グローバルな拡張抑止には比重が置かれていないという。NDSは米軍の海外展開や資源配分の基本指針にあたることから、軍上層部は「戦略的現実性を欠く恐れがある」と危惧している。
NDSの編纂過程に詳しいある関係者は、トランプ大統領の外交政策が「個人的な判断に強く依存し、矛盾を抱える」点を指摘。今回のNDS改定も現実に適合しない可能性があるとの見方を示した。また一部の将官の間では、今後、大規模な人事刷新や戦闘司令部の再編が断行されるとの見方も一部で出ている。
国防総省のショーン・パーネル報道官は「NDSは機密に分類されており、内容や編纂過程については言及できない」とした上で、ヘグセス長官が「トランプ大統領の掲げる『アメリカ・ファースト』、『力による平和』の原則を反映させるよう指示している」と説明。開発作業は「まだ進行中」と強調した。ただし『WP』は「すでに最終段階にある」と報じている。
ヘグセス長官は30日、バージニア州クアンティコ海兵隊基地に全世界の司令部に所属する将官級指揮官を召集し、軍事規範や「戦士の精神」について訓示する予定だ。トランプ大統領もこの席に出席するとみられる。さらに長官は、現在約800人に上る将官ポストを約2割減らし、世界各地の戦闘司令部を統廃合する構想も進めている。
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