トランプ大統領の「戦争で選挙回避」批判 和平案受け入れ圧力に対抗する勝負手
戒厳令下での選挙実施も示唆 世論調査ではゼレンスキー大統領が依然トップ

ウォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領は9日(現地時間)、米国とウクライナのほかの同盟国が安全な選挙を保障できるのであれば、3か月以内に大統領選を実施する用意があると明らかにした。ドナルド・トランプ大統領が、昨年任期が満了したゼレンスキー大統領の正統性に疑義を呈し、クリスマスまでにロシアとの平和協定を受け入れるよう圧力を強める中で打った一種の勝負手とみられる。
ロイター通信によると、ゼレンスキー大統領はこの日、「選挙を行う準備はできている。加えて、米国が欧州のパートナーとともに選挙の安全確保に協力してほしい」と述べ、「今後60〜90日以内に、ウクライナは選挙を実施する態勢を整えられる」と語った。
ウクライナでは戒厳令下の選挙が法律で禁じられている。戦争開始後に発令された戒厳令を根拠に、ゼレンスキー大統領は昨年の任期満了後も選挙を実施していない。トランプ大統領はこの点を問題視し、ウクライナにロシアへ相当な領土譲歩を行う平和協定案を受け入れるよう迫っている。
トランプ大統領は同日公開された米政治メディア「ポリティコ」とのインタビューで、ウクライナ政府が戦争を選挙回避の口実として利用していると主張した。大統領は「彼ら(ウクライナ)は民主主義について語っているが、もはや民主主義とは言えない状態に至っている」と述べたうえで、「ゼレンスキー大統領は現状を受け止め、前に出て決断すべきだ。彼は負けつつあるからだ」と圧力をかけた。また、「欧州は弱く、『政治的正しさ』ばかりを追い求めている」として、欧州が和平交渉の前進にほとんど貢献していないと批判した。
ゼレンスキー大統領は、自身が権力に固執しているとするトランプ大統領の指摘を退けた。ウクライナ政府はこれまで、ロシアによる頻繁な空爆、約100万人の前線配備兵力、数百万人規模の避難民を理由に選挙の実施は現実的でないとの立場を示してきた。国土の5分の1を占めるロシア占領地域の住民や、最前線近くの有権者に投票権を十分に保障することも難しい状況だ。
ただ、ゼレンスキー大統領はこの日、それまでの姿勢を転換し、戒厳令下でも選挙を可能にする法案を議会に提案するよう求める考えを表明した。キーウ・インディペンデント紙によると、世論調査機関インフォサピエンスが先月下旬に実施した調査で、次期大統領選でゼレンスキー大統領に投票すると答えたウクライナ国民は20.3%だった。僅差ながら首位を維持しているものの、1か月前より4ポイント低下した。
一方、フィナンシャル・タイムズによれば、トランプ大統領は自ら提示した和平案に対するウクライナ側の回答期限を数日以内に示したという。6日には、トランプ大統領の特使スティーブ・ウィトコフ氏と娘婿のジャレッド・クシュナー氏がゼレンスキー大統領と約2時間にわたり電話会談を行い、早期の決断を迫った。これに対し、ゼレンスキー大統領は欧州の同盟国と協議する時間の確保を求めた。トランプ大統領はクリスマス頃までの合意を目標としている。
ゼレンスキー大統領はまた、米国側が提示した28項目の和平案修正について「一定の前進があった」と述べた。当初の案には、ゼレンスキー大統領が「反ウクライナ的」として受け入れられないと明言した条項が複数盛り込まれていたが、現在は20項目にまで絞り込まれ、ウクライナ側に有利な内容へと修正が進んでいるという。ただし依然として、ウクライナが領土の相当部分を放棄することが前提となる一方、米国による安全保障の約束はなお不透明だとされる。













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