米陸軍長官が最先端の非武装地帯を提案
「ロシアは信用できず、非武装地帯の意味が曖昧」との指摘も

ウクライナ戦争の終結交渉を仲介しているドナルド・トランプ米政権が、ウクライナ東部の前線地帯に朝鮮半島式の非武装地帯(DMZ)を設ける案を検討したものの、ウクライナ側は慎重な姿勢を示していると伝えられている。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は11日(現地時間)、米国が先月初めて提示した28項目の停戦案草稿に、ウクライナがドネツク州から撤退し、その区域に「中立的・非武装の緩衝地帯」を設ける構想が含まれていたと報じた。
ドネツク州は現在、ロシアが州域の約4分の3を支配しており、ロシアは同地域全体を自国領と認めるよう要求し、ウクライナ軍の撤収を停戦条件として掲げてきた。
FTによると、米国案の草案では、緩衝地帯が国際法上ロシア連邦領として扱われる代わりに、ロシア軍は同区域に入らないとする内容が盛り込まれていた。
トランプ大統領はこの構想を含む草案への同意を得るため、先月末にダニエル・P・ドリスコル米陸軍長官をウクライナおよび欧州に派遣した。しかし、ドリスコル長官が説明会を開いた場では、ウクライナ政府関係者が強い不快感を示し、出席した欧州当局者からは米国側の停戦案の説明が「不快なほどだった」との評価が出たという。
当時、ドリスコル長官は米国が東部前線に「最先端の非武装地帯」を含む安全保障パッケージを提供する用意があるとし「世界のどの地域よりも強力な防衛線を提供できる」と説明したとされる。

ウクライナ側の交渉担当者によれば、米国は朝鮮半島の南北を隔てる非武装地帯に近いモデルを東部前線に適用する案を進めているという。
9日には米紙ワシントン・ポスト(WP)の外交コラムニスト、デイビッド・イグネイシャス氏も、停戦案に朝鮮半島式の非武装地帯構想が含まれていると報じた。
報道によると、検討中の非武装地帯は北東部ドネツク地域から、南部ザポリージャ、ヘルソン地域に至る前線に沿う形で設定される可能性がある。非武装地帯の背後に中・重火器の配備を禁止する追加の緩衝地帯を設ける案も協議されている。実現する場合、現在の朝鮮半島を隔てる非武装地帯と同様、厳格な監視・統制が行われる区域になるとの見方も出ている。
イグネイシャス氏は、ゼレンスキー大統領が「領土の譲歩は憲法上不可能だ」と強調してきた点を挙げ「これを迂回する一つの方式が朝鮮半島モデルだ」と説明した。韓国と北朝鮮が朝鮮半島全域に対する権利を主張しながらも、実際には軍事境界線と非武装地帯を挟んで現状が固定された例であるためだ。
ウクライナ戦争では、これまでにも「韓国式の休戦」や「朝鮮半島型緩衝地帯」構想が度々取り沙汰されてきた。今年3月にはスイスのシンクタンク、ジュネーブ安全保障政策センター(GCSP)が全長約1,100kmの前線に、少なくとも幅6マイル(約9.65km)の緩衝地帯を設ける案を提案した。8月には米国、ウクライナ、欧州の関係国が米軍の軍事・兵站・技術支援のもと、多国籍・EU部隊がウクライナ国境を保護する「安全回廊」構想を協議したとの報道もあった。
しかしゼレンスキー大統領は、その都度「ウクライナと朝鮮半島の状況は異なる」として反対してきた。非武装地帯の設定は前線を凍結させるだけで、ロシアが次の侵攻を準備する時間を与えるだけだとの批判である。
フィンランドの軍事分析グループ「ブラックバード・グループ」のエミル・カステヘルミ氏はFTに対し「強力な安全保障、たとえば派兵などの確約があれば、ウクライナがドネツクから後退する可能性はあるものの、ロシアを信用できない点、譲歩後に西側の対ロシア制裁緩和や支援縮小のリスクがある点が問題だ」と指摘した。
また専門家からは、「非武装地帯」という用語自体の曖昧さも課題として挙げられている。米シンクタンク、カーネギー国際平和基金のロシア・ユーラシアプログラムのマイケル・コフマン上級研究員は「現在の戦場はドローン戦、広範な地雷原、長距離砲撃が支配している」とし「その環境で非武装地帯が何を意味するのか不明確だ」と指摘した。
コフマン氏はさらに「軍がドネツク全域から撤収するという意味なのか、停戦ラインの中央を基準に双方が同割合で兵力を引くという意味なのかも不明だ」とし「非武装とはどの水準の兵器・兵力の配置を認めないことなのか、最前線の外側20kmまで到達するドローンをどう管理するのかも疑問だ」と述べた。















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