
長時間にわたって何度も運動するのが難しい場合でも、一度の運動で抗がん効果が得られるという研究結果が話題となっている。
オーストラリアのエディスコーワン大学の研究チームは、最近、乳がん患者32名を対象に、1回の運動ががんに与える影響を分析した。参加者は、少なくとも4ヶ月前に一次治療(手術・化学療法・放射線治療)を終え、主治医から運動の許可を得た患者で構成された。
参加者は無作為に、45分間の▲筋力トレーニング群(中~高強度の筋力運動8セット)と▲インターバルトレーニング群(ランニングマシンまたは室内自転車で最大心拍数の70~90%を維持しながら高強度と低強度を交互に行う)に分けられた。研究チームは、参加者から運動前、運動直後、そして運動30分後に血液サンプルを採取・分析した。
その結果、両グループとも運動直後に血中マイオカイン濃度が9~47%増加し、その後も運動30分後まで高いレベルを維持した。
マイオカインは運動時に筋肉から分泌される抗炎症・抗がん物質であり、運動後の参加者においてがん細胞の増殖率は20~30%減少した。特に、インターバルトレーニング群でその効果が顕著であった。
研究チームは、高強度運動時に増加するアドレナリンやノルアドレナリンなどの交感神経ホルモンが免疫細胞を活性化し、筋肉細胞内でのマイオカイン分泌を促進すると分析した。高強度と低強度を交互に行うインターバルトレーニングは、代謝をさらに活性化させるため、効果が高いという。
研究を主導したフランチェスカ・ベタリ博士は「今回の研究結果は、乳がんサバイバーに対して1回の運動だけでも抗がん効果を引き出せることを示した点で意義深い」と述べ、「運動が単なる体力向上を超え、生物学的にがんの再発を抑制する非薬物的治療戦略となり得ることを示唆している」と語った。
なお、この研究は『Journal of Cancer Survivorship(がんサバイバーシップ研究)』に掲載された。
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