両方の腎臓が機能不全になった場合、透析で老廃物を除去するしかない

腎臓は、血液をろ過し、不要な塩分や老廃物を排出して尿を作る役割を担っている。体内の水分や電解質のバランス、酸・アルカリの恒常性の維持、ホルモンの生成、他の臓器機能の調整など、生命維持に欠かせない多くの重要な機能を果たしている。腎臓が機能しなくなると、体内に溜まった老廃物を取り除くために「血液透析」が必要になるが、これは体に大きな負担をかける治療法だ。腎臓の健康について改めて考える必要がある。
週3回、1回4時間の透析治療…「QOL最悪」「家族の負担大」
透析を受ける生活は、生活の質を著しく低下させる。週3回、1回あたり約4時間を要する。腎移植を検討しなければならない場合もある。2022年だけで、慢性腎臓病の患者数は29万6,397人に上る(健康保険審査評価院)。この数は年々増加傾向にある。腎臓がんのリスクも高まり、2022年には6,963人が新たに腎臓がんと診断された(国立がん研究センター)。長期にわたり血液透析を受けた結果、がんを発症するケースも少なくない。どうすれば腎臓の健康を守れるのだろうか。
両方の腎臓が機能不全に…自覚症状が出る頃には手遅れ
人間の体は片方の腎臓だけでもある程度の機能を果たすことができる。しかし、両方の腎臓が機能しなくなった場合、血液透析や腹膜透析によって老廃物の除去や水分バランスの調整をするなど、腎臓の機能を代替する必要がある。他人の腎臓移植を受ける「腎移植」が必要になることもある。腎臓病は症状が現れるのが遅いため、適切な治療のタイミングを逃してしまう恐れがある。透析や移植が必要な末期腎不全になると、生活の質が急激に低下し、家族にも介護の負担がかかってしまう。
50〜60代は糖尿病・高血圧の予防・管理が重要
腎機能が低下する主な原因は「糖尿病」と「高血圧」である。その他、糸球体疾患、多発性嚢胞腎、腎・尿路結石、前立腺肥大、反復性腎盂腎炎などもリスクの要因となる(疾病管理庁)。初期には症状が現れないことが多く、健康診断で血清クレアチニンの上昇や尿中タンパクの検出でようやく異常に気づくケースが多い。しかし、その時点でも深刻に受け止めない人が多い。腎臓がんの年齢別発症率を見ると、60代が29.7%で最も多く、次いで50代が23.4%、70代が18.5%の順だ。更年期で体の変化が大きい時期には、腎臓の健康にも注意が必要だ。
腎機能低下のサイン…何から始めるべきか
腎機能が低下すると、体のむくみが見られ、また、高血圧が悪化する可能性がある。朝起きた直後に顔や手足がむくみ、午後になると足が腫れる。階段を上ると息切れを感じるが、これを単なる運動不足と誤解することもある。腎機能が低下すると体内の体液量が増加し、心臓に負担をかけて心不全を引き起こす可能性がある。血液循環が悪くなり、息切れになるということだ。腎臓の異常は、血清クレアチニン検査や尿検査で把握することができる。
腎機能低下の兆候が見られたら、まず塩分摂取を控えることが重要だ。体内に塩分が排出されずに溜まり、体液過多や高血圧が悪化、さらに腎機能が悪化する恐れがある。腎臓内科医に相談し、個々の状況に応じた対策を立てる必要がある。腎臓病は早期対応が重要だ。禁煙、減塩食、血圧・血糖の管理は基本中の基本である。家族のためにも、腎臓病を予防する努力が求められる。