男性は女性よりもはるかに長く子どもを持つことができるが、その一方で、年齢を重ねるほど子どもに遺伝性疾患が発生するリスクが高まるという。年を取るにつれて精子の遺伝子に有害な突然変異が増え、その一部は精子の生成を助けるため、自然選択によって残されているという研究結果が発表された。

英国のウェルカム・サンガー研究所の研究チームは、この内容をまとめた論文を10月8日(現地時間)に国際学術誌『ネイチャー』に発表した。自然選択とは、環境に適応した形質を持つ個体が生存・繁殖し、その形質が次世代へと受け継がれる進化の根本原理である。
論文によると、30代前半の男性の精子の約2%が病気を引き起こす突然変異を持っていたが、中年(43〜58歳)および老年(59〜74歳)の男性の精子ではその割合が3〜5%に増加した。70歳では4.5%に達していた。研究チームによると、精子細胞1個につき毎年平均1.7個の新しい突然変異が生じるという。つまり、父親の年齢が上がるほど子孫の遺伝的リスクが増加するということである。
骨や臓器を構成する体細胞の突然変異はその個体にのみ影響を与えるが、精子や卵子などの生殖細胞の突然変異は次の世代に受け継がれる。しかし、DNAの遺伝情報を完全に解読することは難しく、これまで精子中の変異がどの程度「選択」されているかを測定するのは困難だった。
研究チームは、24歳から75歳までの健康な男性81人の精子からDNAを抽出し、超精密塩基配列解析法である「ナノシーク(NanoSeq)」を用いて解読した。生命の設計図であるDNAは、4種類の塩基がつながった順序によって遺伝情報が決まる。塩基の配列に従ってタンパク質が合成され、生命現象が制御される。遺伝子解析とは、この塩基配列を詳細に確認する作業である。
ナノシークは、DNA塩基10億個あたり解読エラーが5個未満という高精度を誇り、精子中の変異をほぼ完全に確認できたと研究チームは述べた。また、精子に加えて採取した血液サンプルも分析し、精子で発見された変異が皮膚や骨などの体細胞には見られない、純粋な生殖細胞変異であることを確認した。
興味深い点は、年を重ねるにつれて精子にランダムに変異が蓄積されるのではなく、一部の変異が選択されるという事実である。特定の変異を持つ生殖細胞は、他の細胞よりも生存しやすく、または早く増殖して多くの精子を生成する傾向があるという。
研究チームは、自然選択に有利な変異を40個確認した。以前はそのうち13個しか知られていなかった。その中には、小児疾患や深刻な神経発達障害、遺伝性癌リスクに関連する遺伝子も含まれていた。学界では、今回の研究結果が「生活習慣など環境要因が、どのように次世代の遺伝的リスクへ影響するのか」を探る新たな手がかりになると評価している。
また、ハーバード大学医学大学院とサンガー研究所の共同研究チームは、精子そのものではなく、すでに子供に伝達されたDNAを分析した結果も発表した。親子5万4000組のDNAと成人80万人のゲノムデータを比較した。その分析の結果、精子で変異が生じた際に特に増加する30以上の遺伝子が確認された。このうちかなりの数は、最初の研究で精子そのものを分析した際に確認された40個の遺伝子と重なっていた。
年を取るにつれて有害な突然変異を持つ精子の割合は増加するが、だからといって必ずしも年配の父親から悪い変異遺伝子を持つ子供が生まれるとは限らない。研究チームは「変異の中には、受精や胚の発達に障害を引き起こし、妊娠損失をもたらす可能性があるものもある」と述べ、「精子の突然変異の増加がどのように子供の健康結果につながるかを正確に理解するためには、さらなる研究が必要である」と結んだ。
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