
欧州連合(EU)が、病院や家庭、学校など日常生活で広く使用されている必需品である手指消毒剤の主成分エタノールを発がん性物質として分類する方針を検討していることが明らかになり、波紋が広がっている。
21日(現地時間)、英紙「デイリー・メール」などによると、欧州連合(EU)傘下の欧州化学物質庁(ECHA)の作業部会は今月10日にまとめた内部勧告書で、エタノールを「発がんや妊娠合併症のリスクを高める有害物質」と指摘し、代替物質の使用を推奨した。
ECHAの殺生物製品委員会(BPC)は、来月24〜27日に会議を開き、エタノールの人体への有害性を議論する予定だ。その後、EU欧州委員会が最終決定を下す見通しである。
ECHAは「専門家委員会がエタノールを発がん性と判断した場合には代替を推奨するが、実際の使用環境で安全と判断される場合や代替物が存在しない場合は、一部の用途で使用を継続できる」と説明した。
このニュースを受けて、医療界および産業界からは懸念の声が上がっている。
「クリーン・ホスピタル・ネットワーク」に所属するジュネーブ大学のアレクサンドラ・ピータース教授は「病院への影響は甚大だ」と指摘した。
同教授は「医療関連感染による死亡者数は、マラリアや結核、エイズによる死亡者の合計を上回る」とした上で、「アルコール系手指消毒剤の使用により、世界で年間約1,600万件の感染が防がれている」と強調した。
エタノールの代替物として、一般的な消毒剤に広く使用されているイソプロパノールが挙げられているが、「逆に毒性がより強い」との指摘もある。ピータース教授は「手指消毒剤がなければ、看護師は手術中の手洗いに毎時間30分以上を要することになる」と述べた。
酒の主成分でもあるアルコールは、世界保健機関(WHO)が指定する「グループ1」の発がん性物質に分類されている。ただし、これは飲酒によって体内で発がんリスクが生じる場合に限られる。手指消毒剤に使われるエタノールは皮膚に塗布するものであり、人体への曝露経路が異なるうえ、これに関する研究はまだ比較的少ない。
ECHAは「最終決定にはまだ至っていない」としているが、業界ではエタノールが有害物質に指定された場合、行政手続きの負担やコストの増加を懸念している。
ピータース教授は「エタノールはほぼすべての原料から製造できるため、新型コロナウイルスのパンデミックのような危機時でも手指消毒剤を迅速に確保することができた」とし、「醸造所をイソプロパノール工場に転換することは不可能だ」と強調した。
仮にエタノールが有害物質に指定された場合でも、企業は「代替物がない」という理由で個別の例外申請を行い、使用を継続できる。しかし、国際石鹸・洗剤・清掃用品協会(AISDMP)EU事務局長のニコール・ベイニー氏は、「例外許可は最長5年間の暫定措置にとどまり、個別審査を経る必要があるため、行政手続きの遅延やコスト増が懸念されている」と述べた。














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