イネオス・フュージリア、開発パートナーを交代
チェリー汽車のプラットフォームを採用へ
魅力は十分だが、カギは消費者の“納得感”

イネオス・オートモーティブは、新型電動SUV「フュージリア(Fusilier)」の開発パートナーを、当初のマグナ・シュタイヤーから中国・奇瑞汽車(チェリー)に切り替えると発表した。発売延期が繰り返されていた開発スケジュールを前倒しし、2027年の市場投入を確実にするための判断とされる。
フュージリアは、メルセデス・ベンツGクラスの開発に携わった技術陣が関与することでも注目を集めていた。Gクラスの“異母兄弟”とも称されるこの新型モデルは、オフロードSUV市場において独自の地位を築こうとしている。

Gクラスの異母兄弟
フュージリア
フュージリアは、イネオスが欧州市場をはじめとした環境規制への対応として投入を計画する初の本格電動SUVであり、その基盤にはチェリーが開発したPHEV/EV向けプラットフォームが採用される。
ベースとなるのは、チェリー傘下のオフロード系ブランド「iCaur」が展開するSUV「V27」。このプラットフォームは最大出力449psを発揮可能なAWDシステムを備えており、フュージリアにも同等クラスの動力性能が期待されている。
チェリーのEVおよびハイブリッド技術を活用することで、加速性能や航続距離、エネルギー効率といった分野で競争力を確保し、プレミアムセグメントへの本格参入を図る構えだ。

生産はフランスで実施
“メイド・イン・チャイナ”を回避へ
完成車の組立はフランス国内で行われる予定であり、チェリーが提供するシャシーやパワートレインなどの主要部品を欧州で組み立てる体制となる。この方式により、輸入車にかかる関税や物流コストの最適化も図られる。
昨今、日本市場でもオフロードSUVの人気が再燃している。ランドクルーザーやGクラスといったフラッグシップSUVへの関心が高まる中、イネオス・フュージリアは独立系ブランドとして独自の魅力を打ち出せるポジションにある。
一方で、シャシーを含めた基幹構造を中国メーカーが供給している点については、ブランド価値や信頼性への懸念を払拭する必要がある。特に品質やブランドの信頼性を重視する市場では、その点に対する丁寧な説明と戦略的ブランディングが求められるだろう。
果たしてイネオスは、機能性と感情的価値の両面でユーザーの納得を引き出し、Gクラスの牙城に挑むことができるのか。今後の動向に注目が集まる。
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