
支持率低下に苦しむドナルド・トランプ米大統領が、薬価引き下げや超富裕層への増税など民主党寄りの政策に傾斜し、民心の離反を食い止めようと苦心しているとの分析が出た。
13日(現地時間)、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、トランプ大統領の「左傾化」の代表例として、前日に署名した薬価引き下げに関する大統領令を挙げた。この命令は、高額で知られる米国の薬価を他国並みに引き下げるため、製薬会社の自主的な価格引き下げを促し、当局も規制に乗り出すことを骨子としている。トランプ大統領はこの命令を米国史上最も重要な大統領令の一つと自賛し、同じ薬が米国では10倍以上の価格で販売されていると主張した。
トランプ大統領の薬価引き下げ命令に、米国左派の代表的存在であるバーニー・サンダース上院議員も賛同した。サンダース議員は、問題は他国の処方薬が安すぎることではなく製薬会社の貪欲さだとしつつも、「トランプ大統領に同意する。米国民が処方薬に最高額を支払うのは理不尽だ」と述べた。
トランプ大統領はさらに、民主党の政策の一つである超富裕層への増税案にも支持を表明した。年間250万ドル(約3億6,500万円)以上の所得がある個人に対し、所得税率を37%から39.7%に引き上げる案を支持すると明らかにした。これは富裕層減税を含むトランプ大統領の従来の減税路線とは一線を画す動きだ。
トランプ大統領のこうした「左寄り」の姿勢は、支持率低下に起因するとの見方が大勢を占める。関税戦争に端を発した景気後退懸念から、トランプ大統領の経済政策に対する否定的な世論が広がるのを早期に抑え込む狙いがあるとされる。また、来年の中間選挙を前に民主党の攻勢を事前に封じる意図もあると分析されている。
一方で、トランプ大統領の変化が根本的な政策転換によるものではなく、ポピュリズム的傾向に起因するとの見方もある。サンダース議員の元スタッフ、リズ・ファンコティ氏はFTに対し、「トランプ大統領はこれらの政策が人気があることに気づいたのだろう。彼は人気のあるものを好む人物だ」と語った。