
米国債に対する信頼低下とドル安が重なったことで、金価格が再び安全資産として注目を集めている。
先週、ニューヨーク商品取引所で取引された6月物金先物価格は、23日(米国時間)にトロイオンス(31.10g)当たり3,365.80ドル(約47万9,879円)で取引を終えた。週初の3,233.50ドル(約46万1,016円)から132.30ドル(約1万8,863円)、率にして4.09%上昇した。
FXリーダーズ(FXLeaders)などによると、最近の金相場の上昇は単なるテクニカル反発にとどまらず、米国の国家信用格付けの引き下げや国債入札の不振が投資家の不安を煽っているという。
ムーディーズ(Moody’s)は米国の信用格付けを引き下げ、160億ドル(約2兆2,811億9,872万円)規模の米国債入札も市場予想を下回る結果となった。これにより、米政府に対する信頼が揺らいでいることを示唆している。
さらに、米下院で可決した大規模な税制・歳出法案も金市場に影響を与えている。この法案は、今後数兆ドル規模の追加的な国家負債を生む可能性があり、債券市場への圧力をかけている。こうした財政リスクの高まりが、金などの実物資産への需要をさらに刺激している。
地政学的リスクも金価格上昇の要因となっている。最近では、イラン外相が「イスラエルが自国の核施設を攻撃した場合、米国にも法的責任を追及する」と警告した。CNNは、イスラエルが軍事行動を検討していると報じており、中東情勢の緊張が再び高まっている。世界的な不確実性が高まると、投資家は自然と金のような安全資産に目を向ける傾向があると指摘されている。
テクニカル面でも、金相場は堅調な上昇トレンドを示している。今月初めに3,206ドル(約45万7,287円)で底を打った後、高値と安値が徐々に上昇する構造を形成している。特に最近の時間足チャートでは、上昇反転のシグナルとして知られる強気の包み線やスピニングボトムと呼ばれる紡錘底シグナルが確認されており、MACD指標も緑色に転じ、上昇モメンタムを示唆していると分析された。
このような動きは過去にも見られている。2011年、米国が国家負債の上限問題で信用格付け引き下げの危機に直面した際も、金価格は大幅に上昇した。当時の金価格はオンス当たり1,900ドル(約27万1,026円)を突破し、過去最高値を更新した。ブルームバーグは「政治的不確実性と金融危機の相乗効果が金価格を押し上げた」と分析した。
専門家によれば、今回の金価格上昇は短期的な問題ではなく、マクロ環境の変化に起因するものとみられるという。財政健全性への懸念、ドル安、地政学的リスクが複合的に作用し、金は再び伝統的な安全資産としての地位を取り戻しつつあると述べている。