
政府が米国との関税交渉で貿易不均衡解消のため、米国製の半導体製品を数十億ドル相当購入する提案をしたと朝日新聞が28日に報じた。報道によると、半導体輸入額は最大1兆円に達する可能性がある。政府は人工知能(AI)開発に不可欠なデータセンター用半導体の市場を独占しているエヌビディア製品を念頭に置いてこの提案をしたとみられる。政府はデータセンターを運営する国内IT企業に補助金を支給し、米国製半導体の購入を支援する方針だと朝日は伝えた。
また、政府は半導体製造に必要なウェハーや化学薬品などを米国内で生産する企業への支援策も米国側に提案した。朝日は「日米両国がサプライチェーンを強化することが経済安全保障の確保につながるという点を強調しようとしている」と解説した。ただし、昨年の米国の対日貿易赤字は685億ドル(約9兆9,024億円)で、政府が提案した半導体購入額は多くても赤字額の10%程度にすぎない。
政府はこれまでも農産物の輸入拡大、自動車輸入拡大のための制度改善、造船分野での協力などを米国への「交渉カード」として提示してきた。しかし、米国は相互関税で一律に課した10%に加え、国別に追加適用した関税(日本は14%)についてのみ協議が可能であり、自動車関税など品目別の関税調整には難色を示しているとされる。政府は対米輸出の約30%を占める自動車関税の引き下げが必須だとの立場で、両者の見解の相違は依然として大きい。
こうした状況下で、関税担当閣僚である赤沢亮正経済再生相は29日に訪米し、30日(現地時間)、米ワシントンDCでスコット・ベッセント米財務長官らと4回目の関税交渉を行う予定だ。NHKは「政府は米国の理解を得るため、追加提案を検討している」とし、「意見の接近が見られない場合、赤沢経済再生相が来週フランスで開催される国際会議に合わせて米国閣僚と再度交渉する案も政府内で浮上している」と報じた。さらに、政府は来月中旬にカナダで開催されるG7首脳会議を機に行われる日米首脳会談で関税問題をある程度解決することを目指し、米国側と集中的に交渉を進める構想を持っていると付け加えた。