
ハワード・ラトニック米商務長官は、トランプ政権の関税政策を巡る裁判の先行き不透明感が欧州連合(EU)との貿易交渉の大きな障害にはならないと主張した。ラトニック長官は1日(現地時間)放送のフォックス・ニュースのインタビューで、「関税訴訟の不透明感がEUに追加的な交渉力を与えるという主張をどう考えるか」との質問に対し、「愚かな者の愚かなコメントに耳を傾けてはいけない」と答えた。
この発言は、第一審の米国際通商裁判所が先月28日、米トランプ政権の相互関税を権限逸脱として差し止め命令を出したが、翌日に第二審の連邦控訴裁判所がトランプ政権の控訴書類を審査する間、差し止め命令の効力を一時停止したことを受けてのものだ。米国際通商裁判所の判決が交渉に与えた影響について、ラトニック長官は「おそらく1週間ほど(交渉が)遅れた可能性はあるが、その後すべての国がすぐ交渉テーブルに戻ってきた」と述べた。
ラトニック長官は「心配無用だ。関税はなくならない」と発言し、トランプ政権の関税施行への強い意志を示した。さらに「我々と交渉するすべての国は、ドナルド・トランプ米大統領の権力と米国労働者を守る能力を理解している」と強調した。これは、EUの関税交渉関係者の「EUに対し関税訴訟の不透明感は有利に働く」との発言を反論したものだ。
トランプ大統領はEUへの圧力として、全てのEU産品に6月1日から50%の関税を課すと威嚇したが、これを7月9日まで延期した。さらに、輸入鉄鋼・アルミニウムへの関税を25%から50%に引き上げる計画を突如発表した。これに対し欧州委員会は「必ず対抗措置を取る」と警告している。
一方、トランプ政権の関税政策が裁判所で足止めされたことで、貿易相手国が対応方針を決められず、「様子見モード」に入る可能性が指摘されている。この訴訟が最高裁判所まで上がれば、年内に結論が出ない可能性が高いためだ。しかし、スコット・ベッセント米財務長官も5月29日のフォックス・ニュースのインタビューで、 裁判所の判決が関税交渉に影響を与えたかとの質問に「過去48時間、(貿易相手国の)態度に何の変化も見られない」と一蹴している。