レーガン元大統領の「スターウォーズ」とイスラエルのアイアンドームがモデルも「非現実的」
ゴールデンドーム第1段階250億ドル(約3兆6,013億1,952万5,000円)、4,300万台以上のドローン生産が可能
「中国もウクライナのようにアメリカへのドローン攻撃が可能」

米誌ニューズウィークは2日、ウクライナの「クモの巣作戦」によるドローン群の攻撃を「ロシア版真珠湾攻撃」と表現した。
また、ドナルド・トランプ大統領が意欲的に打ち出した宇宙防衛構想「ゴールデンドーム」については、時代錯誤的な発想であるとの指摘も出ている。
「未来の戦争は宇宙ミサイル防御ではなく、安価なドローンで遂行される」
軍事アナリストのマックス・ブート氏は、ウクライナによるドローン作戦「クモの巣」の前日、ワシントン・ポストのコラムで、未来の戦争は巨大な宇宙ベースのミサイル防御ではなく、安価な使い捨てドローンの群れによって行われると予測した。
トランプ大統領が先月20日に発表した「ゴールデンドーム」は、1,750億ドル(約25兆1,867億8,750万円)規模の宇宙ベースのミサイル防衛システムだ。
トランプ政権は2029年までに米国を超音速ミサイルと大陸間弾道ミサイルの脅威から守ると明言した。
米議会予算局はゴールデンドーム完成までに20年間で8,300億ドル(約119兆4,847億1,836万円)かかると試算した。
この計画は宇宙ベースのレーザーを含むセンサーと迎撃機を搭載した衛星網で構成されている。
ロナルド・レーガン元大統領の戦略防衛構想(SDI・スターウォーズ)を部分的にモデルとした軌道ベースの多層ミサイル防衛システムだ。
批評家たちは、ゴールデンドームは40年前のSDIと同様に現実性に乏しいと主張する。
英シンクタンクの王立国際問題研究所(チャタムハウス)は、ゴールデンドームが世界の不安定さを深め、戦略的競争を加速させる危険性があると警告した。
「クモの巣」作戦のように、低コストのドローン群によって、数十億ドル規模の軍事施設の機能を停止させることが可能になった。
ニューズウィークの取材に応じた軍事アナリストらは、米国がミサイル防衛の優先順位を、将来の脅威に即した形で見直すべきか、それとも存在しない過去の脅威への対策にとどめるべきか、再評価が求められていると指摘している。
軍事アナリストのブート氏は、ウクライナが今年、1台あたり平均580ドル(約8万3,454円)のコストで450万台のドローンを生産する目標を設定したと述べた。
これは米国防総省の生産量をはるかに上回る規模であり、ゴールデンドーム第1段階に割り当てられた250億ドル(約3兆6,013億1,952万5,000円)で理論上は4,300万台以上のドローンを生産できる計算だ。
「中国もウクライナのように米国へのドローン攻撃が可能」
ブート氏は「ウクライナがロシアのような警察国家の主要空軍基地にドローンを密かに侵入させることができるのなら、中国が米空軍基地に対して同様の手段を講じる可能性を否定できるだろうか」と問いかけた。
また、戦略国際問題研究所(CSIS)の無人機(UAV)専門家ザカリー・カルテンボーン氏も、「中国による類似のドローン攻撃は、現実的に懸念すべきシナリオだ」と指摘している。
中国は現在、世界最大のドローン生産国だ。世界最大のドローン企業DJIなどを有する中国は、世界のドローン市場シェアの70~80%を占めている。
ケイトー研究所の国家安全保障アナリスト、ベンジャミン・ギルトナー氏とジャスティン・ローガン氏は、ゴールデンドームは高コストで成功の可能性が低いと警告した。
彼らは、イスラエルのアイアンドームを米国のミサイル防衛システムのモデルとすることは誤りだと主張した。
イスラエルの国土面積は米ニュージャージー州とほぼ同等であり、同国のミサイル防衛網は主に、低速で飛行する無誘導ロケットや各種の発射体に対する迎撃を目的としている。
一方、今回のウクライナによるドローン攻撃では、一人称視点(FPV:First Person View)ドローンが投入され、リアルタイムで標的を追跡し、攻撃の実行過程を遠隔で監視しながら精密な打撃を加えた。