
米国のドナルド・トランプ大統領は4日(現地時間)、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長に「必ず」利下げするよう圧力をかけた。トランプ大統領は同日、米民間雇用サービス会社「ADP」が発表した5月の全米雇用報告で民間雇用が鈍化したことが判明した後、パウエル議長に再び利下げを迫った。
トランプ大統領は、昨年3回の利下げ後、今年は金利を据え置いているパウエル議長が結局利下げの時機を逸し、米経済を景気後退に追い込む可能性があるとして、この日も「遅すぎる」という表現を用いてパウエル議長を批判した。
トランプ大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、「ADPの数字が出た!!!『遅すぎる』パウエル議長は必ず金利を下げるべきだ」と主張した。トランプ大統領は「彼(パウエル議長)は全く信じられない」とし、「欧州はすでに9回も利下げした」と述べた。
トランプ大統領は、今年初めからパウエル議長を解任する方法を探るなど、追加利下げを中止したパウエル議長に金利引き下げを促している。自身が引き起こした貿易戦争、関税戦争が米経済に打撃を与えると予想される中、その影響を緩和する手段として利下げが必要だと判断しているようだ。
米経済の柱である雇用は明らかに減速傾向にある。米労働省が5月の雇用統計を発表する2日前の同日、ADPが発表した5月の全米雇用報告では、先月の民間企業の新規雇用がわずか3万7,000人の増加にとどまったことが明らかになった。
ウォール街のエコノミストらが予想した11万人には遠く及ばなかった。2023年3月以来、最も低調な数字だった。エコノミストらは米労働省の5月の雇用統計で新規雇用が12万5,000人増加すると予想しているが、ADPの低調な統計を見ると、予想を下回る可能性も否定できない。
トランプ大統領は先週、パウエル議長をホワイトハウスに呼び出し、利下げを迫っていた。当時、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は、トランプ大統領がパウエル議長に「金利を下げない過ちを犯している」と述べ、このために米経済が中国や他国と比べて不利な立場に置かれていると主張したと伝えた。一方、パウエル議長はFRBの金融政策は、政治ではなく経済データに基づいて決定されるべきだと反論した。
なお、トランプ大統領は欧州中央銀行(ECB)がすでに9回も利下げしたと主張したが、これは誤りである。ECBはFRBとは異なり継続的に金利を引き下げているが、昨年6月以降、現在までに7回の利下げを行っている。5日の理事会でさらなる利下げが予想されている。
FRBは今月17〜18日に、金融政策決定機関である連邦公開市場委員会(FOMC)を予定しているが、金利据え置きがほぼ確実視されている。