
ウクライナが「クモの巣」作戦を通じて前線から遠く離れたシベリア地域にあるロシアの戦略爆撃機を無力化したことは、ロシアはもとより、世界中に衝撃を与えた。
これまで一人称視点(FPV)ドローンは最前線で対戦車ミサイルやロケットの代替として安価な消耗品的武器として使用されてきた。大量消費される以上、大量生産も必要となる。これを反映し、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は今年だけでFPVドローン450万機の生産計画を発表した。
大量生産には十分な部品供給と生産拠点が不可欠だ。通常、ドローンなどの軍需品は後方の専用工場でのみ生産されると考えられているが、ウクライナは重要部品を生産後、前線各地に送り現場で組み立てたり、3Dプリンターなどを活用する分散型の生産方式を採用している。
ウクライナの広大な前線を考慮すると、分散型生産は戦略的に妥当といえる。後方で大量生産し一律配布する方式では、主要生産拠点が敵の攻撃を受ければ生産が中断し、前線の需要を満たせなくなり、戦争遂行に支障をきたす恐れがある。

このため、ウクライナの分散型生産方式を学ぶ国が増えている。最近、米陸軍はコロラド州フォートカーソンの第4歩兵師団・戦闘航空旅団に「トンボ小隊」と呼ばれる「小型無人航空システムの革新・標準化小隊」を編成した。この小隊がアマゾンで40ドル(約5,741円)で購入した基本システムに一部部品を追加し、低コストの偵察ドローンを生産・訓練する様子も公開された。これは、世界の紛争地で高度な特殊訓練を受けた空軍パイロットだけでなく、一般兵士にもドローンを提供し、戦場での優位性を確保しようとする米陸軍の壮大な構想の一環だ。
フランス陸軍はさらに一歩進み、最前線でドローンを直接生産できる移動式超小型工場を公開した。この工場は3時間でFPVドローン1機を製造できる3Dプリンターを複数備え、1時間当たり最大10機の生産が可能だ。
この移動式工場は1回の給油で19時間稼働でき、エアコン、排煙装置、太陽光パネルなども搭載している。システム全体は軽自動車でも牽引できるほど軽量だ。現時点で3Dプリンターで生産できる部品は機体とプロペラ程度に限られる。モーター、バッテリー、カメラ、飛行制御装置などは外部から調達する必要がある。

まだ制約はあるものの、現場部隊がドローンを直接生産できること自体が前線の能力を大幅に向上させる可能性がある。今後、この方式を導入する国が増えると予想される。韓国でも先月の9日、韓国陸軍・第5歩兵師団が師団内にドローン工作所を開設した。FPVドローンの製作・整備はもちろん、実戦訓練も可能となった。