
イスラエルのネタニヤフ首相がイランを相手に命運を賭けた中東戦争を開始した。
世界は過去数十年にわたる「イラン勢力 vs イスラエル・親西側アラブ諸国」という中東の対立構図において、イラン勢力が完全に崩壊するかどうかに注目している。
核プログラムの除去を名目に挑発に踏み切ったネタニヤフ首相は、最近フォックス・ニュースとのインタビューでイランの政権交代(レジームチェンジ)にまで言及している。
戦争強硬派のイスラエル首相は、自身を制止せず、かといって大きな支援もしないトランプ大統領の傍観者的姿勢を足がかりに、攻撃の長期化を図る構えだ。
過去1年余りでイランの代理勢力であるハマスとヒズボラを掃討した勢いを駆って、今や脅威の根源まで除去できるという自信を見せている。
ここで浮かぶ疑問は「一体ネタニヤフ首相の自信はどこから来ているのか」だ。
この問いに対し、地政学の専門家らは意外にもネタニヤフ首相の後ろ盾であるトランプ大統領よりも「ロシアのプーチン大統領」の動向に注目すべきだと指摘している。
イランに対してロシアが盾の役割を果たすかどうかが、イスラエル・イラン戦争の行方を左右する変数だという見方だ。
ネタニヤフ首相とプーチン大統領は歴史的に意外な関係を築いてきた。
ネタニヤフ首相は1996年の初就任以来、18年間イスラエルを率いている。「21世紀のツァーリ」と呼ばれるプーチン大統領は2000年から25年間にわたり長期政権を維持している。
ネタニヤフ首相は2018年だけで3回もモスクワを訪問するなど、プーチン大統領との親密な関係を誇示してきた。
例えば、2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、西側諸国が一斉にロシアを非難し制裁に加わる中、イスラエルはこの動きに一切加わらなかった。
逆に、ネタニヤフ首相が2期目の首相在任中にシリアを攻撃した際は、プーチン大統領の許可があったからこそ可能だった。周知の通り、ロシアはイランと共にアサド政権下のシリアの最大の後ろ盾国だ。

この二人の独裁者間の親密な関係は、わずか5年の政権歴しか持たないトランプ大統領とは比べものにならないほどだ。
イスラエルとロシアの特殊関係は、イスラエルがいかに巧妙に米ロ両国を相手に綱渡り外交を展開しているかを示す好例だ。ロシアにとって中東は、対米影響力を抑制しつつエネルギー・武器ビジネスでの利益を最大化する戦略的価値を持つ地域だ。特にイランは1960~70年代、発展途上国の中でインド、エジプトに次ぐロシアの第3位の貿易相手国だった。
イランに影響力を持つロシアに対し、イスラエルは友好関係を築き、敵の味方を自陣に引き込む戦略を取ってきたのだ。
ところが2022年、この「味方」の状況に大きな変化が生じた。
ロシアがウクライナに侵攻したのだ。続いて2023年、イスラエルはハマスとの戦争を開始した。イランの影の勢力であるハマスとヒズボラを次々と撃退する中で、イスラエルはこれらに対するロシアの影響力が大幅に弱まったことを実感した。
米国が「二正面作戦」の遂行能力がないと言うように、ロシアも自国領土クルスクにウクライナ軍が迫る状況下で中東情勢に気を配る余裕がなかったのだ(ロシアは北朝鮮軍まで動員せざるを得ないほど本土防衛に追われていた)。
イスラエルと西側に対する抵抗の中心であるイランとシリアへのプーチン大統領の関心と支援がこのように異例の形で放置される中、イスラエルはハマスやヒズボラはもとより、イランの首をも狙う態勢を整えている。
特に今回のイラン核施設に対する攻撃は、ロシアとイランの過去の核協力を考えると極めてセンシティブな問題であるにもかかわらず、ネタニヤフ首相は挑発に踏み切った。
また、無能なアサド政権下のシリアとは異なり、イランのホメイニ政権はウクライナ戦争勃発後、自国製ドローンを大量供給してプーチン大統領を支援した。
プーチン大統領は、シリアのアサド政権崩壊に続き、イラン政権の崩壊までネタニヤフ首相の挑発を黙認し放置するのだろうか。
関連して、プーチン大統領は先月、第二次世界大戦勝利80周年を記念する大規模軍事パレードに出席した北朝鮮軍代表団と握手や抱擁を交わし、特別待遇を施した。
プーチン大統領がイランに対してどのような姿勢を取るか、ネタニヤフ首相同様、ロシアに自国軍を派遣した金正恩国防委員長も固唾を呑んで見守っているはずだ。
今年秋、イランはどのような姿になっているだろうか。
政権交代を含む中東の歴史的変動の行方は、戦争強硬派であり歴史に名を残す独裁者として記録されるであろう二人の特別な関係にかかっている。