NATO、国防費5%引き上げに合意へ 欧州再武装の波、アジアにも波及か

22日(現地時間)、北大西洋条約機構(NATO)の加盟32か国が、各国の国防支出を国内総生産(GDP)の5%に引き上げることで原則合意したことが明らかになった。これはドナルド・トランプ米政権が掲げる「世界の警察からの撤退」路線に呼応し、欧州各国が再武装に動き出した象徴的な一歩とされる。24〜25日に予定されているNATO首脳会議を前にして合意文書の草案がまとめられ、加盟国間での本格的な軍備拡大が進みつつある。
『ロイター通信』などによれば、NATOのマルク・ルッテ事務総長はGDPの2%だった国防支出目標を3.5%に引き上げ、さらに1.5%分をサイバーセキュリティや軍用車両用インフラ整備などの分野に振り分けるという提案を行った。この案には32か国が賛成を表明し、共同声明の草案として採択された。
ただし、国防費支出が最も低いスペインは「GDP比2.1%で十分」として、国としては5%目標を遵守しない立場を表明。左派連立政権内部からの反対圧力も背景にあるとされる。NATOはこの異論を受け、「We(我々)」から「Allies(加盟国)」という表現に修正し、いわゆる「オプトアウト」方式によって例外的対応を認める形で調整を図った。
NATOは現在、国防費目標の達成時期を当初の2032年から2035年に延期する方向で調整しており、今回の草案は首脳会議で各国首脳の正式承認を受ける見通しだ。外信各社は、ウクライナ戦争やガザ紛争、さらには米国によるイランへの軍事的圧力などが複合的に影響し、各国が安全保障を巡って軍拡競争に突入する「ドミノ効果」が現実味を帯びてきたと指摘している。
今後、日本を含むアジア諸国にも、トランプ政権による国防費拡充の圧力が及ぶ可能性があると見られている。
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