
イスラエル裁判所がベンヤミン・ネタニヤフ首相の汚職裁判の日程を延期した。米国のドナルド・トランプ大統領が支援を条件に訴訟の棄却を公然と迫ってからわずか数時間後の決定で、イスラエル司法当局がトランプ大統領の外交的圧力に屈したとの批判が出ている。
ニューヨークポストの29日の報道によると、エルサレムの地方裁判所はネタニヤフ首相の要請を受け入れ、今週予定されていた公判を延期することを決定したという。裁判所は「ネタニヤフ首相は今後2週間、外交および国家安全保障関連の日程があるため、証言の必要がない」と説明した。裁判所はこれまでネタニヤフ首相の要請を拒否してきたが、ネタニヤフ本人、軍事情報トップ、情報機関モサドの長官の意見を聞いた後、方針を転換したという。
しかし、裁判所の方針転換をめぐり論争が巻き起こっている。これまで裁判所は、ネタニヤフ首相側がイランとの休戦やイスラム組織ハマスとの戦争など安全保障上の理由で何度も要求してきた裁判延期を却下してきたからだ。裁判所は2日前にも却下を決定していたが、トランプ大統領の訴訟取り下げ要求から数時間で立場を一変させたのだ。
これに先立ち、トランプ大統領は28日、自身が運営するSNS「トゥルース・ソーシャル」で「イスラエルでビビ(ネタニヤフ首相の愛称)に対して行われていることは恐ろしい」と述べ、「彼は私が過去に経験した政治的魔女狩りと同様のことを経験している。制御不能の検察が狂気の沙汰を行っている」と批判した。さらに「米国はイスラエルの保護と支援に毎年数十億ドルを費やしている。これを黙認するわけにはいかない」と警告した。
イスラエルの野党からも批判の声が高まっている。第1野党「イェシュ・アティード」のヤイル・ラピド党首は「トランプ大統領はガザ地区の戦争を終結させるためにネタニヤフ首相を屈服させようとしており、その見返りとして裁判に介入しようとしている」と指摘し、「独立国家の法的手続きに介入すべきではない」と批判した。
ネタニヤフ首相は2020年5月から、税制優遇を求める実業家らから賄賂を受け取った容疑で裁判を受けている。また、カタールから約6,500万ドル(約93億4,696万円)を受領した容疑もかけられている。
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