移民取り締まり強化からチップ非課税化まで
安全保障・減税・政府支出削減など網羅
政策の方向性が異なり、巨額の費用で党内分裂

米共和党が本格的に立法に着手した「一つの大きく美しい法案」は、2期目を迎えたドナルド・トランプ米大統領の核心的な立法課題である。
移民取り締まり予算の増額からサービス業従事者のチップ非課税化まで、あらゆる政策がこの法案に盛り込まれている。しかし、性質の異なる政策が雑多に詰め込まれていることや、膨大な財政負担への懸念から、共和党内でも意見が割れている。
「メガディール」か「寄せ集め」か
29日(現地時間)米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、前日、上院本会議への上程が可決された法案は全940ページに及び、国防費や移民取締り関連予算の大幅増額が含まれていたという。
安保分野については共和党内の支持も比較的強い。
たとえば、国防費増額案には1,570億ドル(約22兆5,592億8,400万円)が割り当てられ、艦船建造能力の強化に向けた造船業再建や、宇宙ミサイル防衛構想「ゴールデンドーム(Golden Dome)」の構築などに充てられる予定である。
また、移民の強制送還や国境の壁建設などにも1,500億ドル(約21兆5,534億5,600万円)が配分されている。いずれも「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ支持層が歓迎する内容といえる。
一方、財政緊縮策については共和党内でも意見が分かれている。
中でも米国の低所得者向け公的医療保険「メディケイド(Medicaid)」の支出削減案は、党内対立の中心にある。現在は州政府の負担を軽減するため、連邦政府の支援が拡充されているが、これに制限をかける内容が盛り込まれているため、メディケイド対象地域を選挙区に持つ議員からは反発の声が上がっている。
クリーンエネルギー支援打ち切りも争点に

再生可能エネルギー産業への支援縮小も、法案をめぐる新たな対立点となっている。共和党は現在、太陽光や風力発電プロジェクトが2027年までに完成しなければ、インフレ抑制法(IRA)に基づく投資税控除の対象外とする方針を示している。
当初16日に公表された法案の草案では「2027年着工分」まで税制優遇を一部認める内容が含まれていたが、わずか2週間で条件が大幅に厳格化された。
さらに現在審議中の法案には、「禁止対象の外国団体」、すなわち中国と連携する再エネ事業に対して消費税を課すという新たな課税措置も盛り込まれた。再エネルギー分野で主導権を握る中国との取引を断ち切った状態では円滑な事業運営が難しいという現実もあり、エネルギー業界からは強い反発の声が上がっているとWSJは報じている。
一時はトランプ大統領の最側近だったテスラCEOのイーロン・マスク氏も、「未来産業に打撃を与える狂気の沙汰だ」と強く批判している。
加えて、多岐にわたる政策を詰め込んだ超大型法案の膨大な財政コストが、共和党内の財政保守派による激しい反発を招いている。歳出削減以上に新規支出が膨らんでいるうえ、大規模な減税策も併せて盛り込まれているためだという。
法案には、今年満了予定の第1期トランプ政権の「減税・雇用法案(TCJA)」の延長・拡充に加え、チップ収入や社会保障年金への非課税措置などが含まれている。このまま成立すれば、今後10年間で米国政府の財政赤字は3兆ドル(約4,044兆円)規模に膨らむと見込まれている。
今年満了予定の「トランプ1期政権」の減税法案(減税及び雇用法・TCJA)を拡大延長し、チップと社会保障年金を非課税にする内容などだ。このまま可決されれば、米国政府の財政赤字は今後10年間で3兆ドル(約430兆8,526億円)ほど増加すると見込まれている。
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