価格引き上げやリストラ、雇用凍結などが避けられない見通し

ドナルド・トランプ米大統領による関税政策の影響で、米国の雇用主は823億ドル(約11兆8,310億9,809万6,000円)の直接コストを負担せざるを得ず、これに対応するため価格引き上げやリストラ、雇用凍結、または利益減少が避けられないとJPモルガン・チェース研究所が分析結果を発表した。
この分析は、米国の民間部門労働者の約3分の1を雇用する年間売上高1,000万ドル(約14億3,834万8,919円)から10億ドル(約1,438億800万1,888円)の企業に対する輸入税課税に伴う直接コスト負担を測定した初の試みの一つだ。これらの企業は他社より中国、インド、タイからの輸入に依存しており、特に小売業や卸売業がトランプの関税に脆弱であることが判明した。
今回の調査結果は、輸入依存の米国企業ではなく外国の製造業者が関税コストを吸収するというトランプ大統領の主張と矛盾し、トランプ大統領の関税政策がもたらす明らかな違いを示している。トランプ大統領の関税政策がまだ全体的な物価上昇を引き起こしていないことが示されたが、これはアマゾン、コストコ、ウォルマートなどの大手企業が関税導入前に大量の在庫を確保し、関税の影響を遅らせたためだ。
この分析は、トランプ大統領が数十カ国からの輸入品に対する関税率を正式に決定する7月9日の期限を前に発表された。トランプ大統領は4月の関税発表で金融市場がパニックに陥ったため、90日間の交渉期間を設けていた。
JPモルガン・チェース研究所の分析によると、4月2日に発表された関税がそのまま維持されていた場合、企業の追加直接コスト負担は1,876億ドル(約26兆9,787億1,387万542円)に達していたという。823億ドルは従業員1人当たり平均2,080ドル(約29万9,124円)、つまり年間平均給与の3.1%に相当する。
トランプ大統領は1日、報道陣から交渉状況について問われた際、「すべて順調に進んでいる」と答えていた。
大統領が設定した90日間の交渉期間がほぼ終了しようとしているが、米国と貿易枠組みを締結した国は英国のみで、インドやベトナムについては貿易枠組みに近づいていることを示唆しただけだ。
一方で、インフレ上昇が顕在化する可能性を示す証拠が増えている。ゴールドマン・サックスは、企業が関税コストの60%を消費者に転嫁すると予想している。また、アトランタ連邦準備銀行は、企業が消費者需要の減少なしに関税によるコスト負担の約半分を消費者に転嫁するだろうと見込んでいる。
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