ウクライナは、停滞する停戦交渉の中でロシアの軍事施設への攻撃を継続している。ウクライナのメディア「キーウ・インディペンデント」は6日(現地時間)、「前日、ウクライナ軍がロシアのチェボクサルにある軍需産業施設「VNIIR-PROGRESS」への空爆に成功した」と報じた。
VNIIR-PROGRESSは、電波妨害に強い衛星航法アンテナ「コメタ-M(Kometa‑M)」を主に製造する企業だ。同社製のコメタ-Mは、ロシア軍の長距離兵器システムに不可欠な部品とされている。様々な衛星航法信号を受信し、電子戦(EW)環境下でも安定した信号受信が可能だ。

ロシア軍は、このアンテナを搭載したドローンを使用し、敵のジャミングにも関わらず正確に目標を攻撃してきた。特に、ウクライナ戦争を象徴する兵器とされるイラン製シャヘド・ドローンやロシアの無人偵察機「オルラン10」、巡航ミサイル「Kh-101」、イスカンデル弾道ミサイルなどに、同社製のアンテナが搭載されている。
SNSのX(旧Twitter)で公開情報源(OSINT)チャンネルが公開した映像では、ウクライナ軍が発射したドローンがVNIIR-PROGRESS工場の建物に衝突し、大規模な爆発を引き起こす様子が捉えられている。


一部の軍事専門家らは、ウクライナ軍が今回の空爆に使用したドローンが「AN196リューティー(Liutyi)」攻撃用ドローンだと推測している。AN196リューティーは、ウクライナが独自開発した長距離攻撃用自爆ドローンで、射程は1,000km以上とされる。そのため、ロシア領内の奥深くまで攻撃が可能で、最大75kgの爆薬を搭載できる。
VNIIR-PROGRESSが所在するチェボクサルは、ウクライナの首都キーウから約1,000km離れたロシア連邦チュヴァシ共和国の首都だ。ウクライナ軍は先月9日にもチェボクサルを標的とした空爆を実施し、その際にもVNIIR-PROGRESSで大規模な火災が発生した。
ロシアは、ウクライナの首都キーウを含む主要都市を狙ったミサイルとドローン攻撃を強化している。3日夜から4日未明にかけて、合計550機のドローンとミサイルを使用した戦争勃発以来最大規模の攻撃が行われ、キーウだけで23人が負傷した。
この攻撃は、米国のドナルド・トランプ大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話会談を行った直後、プーチン大統領が停戦案を拒否した後に実施された。

トランプ大統領は当時、プーチン大統領との電話会談後に「今日のプーチン大統領との会話に非常に失望した」と述べ、「彼はまだ(戦争を終結させる)準備ができていないようだ。止める意思が全くないように見えた。本当に残念だ」と指摘した。その後、トランプ大統領はウクライナへの米国の主要な武器支援中止の意向を突如撤回し、ウクライナへの継続的な支援の意思を表明した。
米ニュースサイト「アクシオス」は5日、情報筋の話として、トランプ大統領がウクライナへの防空支援の意向を示したと報じた。アクシオスは、両首脳が今後、米国とウクライナの当局者が会談し、防空システムやその他の武器提供について協議することに合意したとも伝えている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も4日の通話直後、Xで「トランプ大統領と防衛産業能力と共同調達に関する詳細な会話も行った」と述べ、「(ウクライナは)米国と直接プロジェクトを進める準備ができており、特にドローンと関連技術は安全保障に重要だと考えている」と伝えた。
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