
テスラの株価が7日(現地時間)、7%超の大幅下落を記録した。
米独立記念日の連休中にテスラCEOのイーロン・マスク氏が「アメリカ党」という新党結成を宣言したことが波紋を呼び、経営への不安が広がっている。
10月1日から電気自動車(EV)への7,500ドル(約109万4,391円)の税額控除が廃止される見通しの中で、マスク氏が本格的に政界進出に乗り出す姿勢を示したことが、テスラにとって大きな逆風となっている。
これまでテスラに対して好意的だった米証券会社ウェドブッシュのアナリスト、ダン・アイブス氏も、今回の新党設立表明は「最悪のタイミングだった」と批判している。
トランプ大統領との対立も影響
マスク氏は昨年の大統領選でドナルド・トランプ大統領の再選に大きく貢献し、トランプ政権下では財政赤字の削減や連邦公務員の削減、規制緩和を担当する「政府効率局(DOGE)」の長官も務めていた。
そうした中、マスク氏は今月5日、新党「アメリカ党」の結成を発表した。
上院で2~3議席、下院で8~10議席を確保し、民主・共和両党の勢力を牽制するキャスティングボート的役割を果たすと宣言している。
これに対しトランプ大統領は、「彼は脱線した列車のようだ」と批判した。
過去5週間の行動を「完全に軌道を外れた」とし、「アメリカで第三党が成功したことはない。米国の政治システムは第三党の存在を想定していない」と強調した。
投資家の期待と逆行する動き
アイブス氏は6日の分析レポートで、マスク氏の政治活動について「テスラの投資家や株主の期待とは正反対の動きだ」と指摘した。マスク氏がDOGE長官の職を退いた際には安堵感が広がったが、それも束の間、今回の新党創設で「投資家に爆弾を投げ込んだ」とまで表現した。
推奨レーティング引き下げも
アイブス氏はこうした悲観的な見通しにもかかわらず、テスラ株の買い推奨と目標株価500ドル(約7万2,990円)を維持している。
一方、米投資銀行ウィリアム・ブレアのアナリスト、ジェド・ドシャイマー氏は、テスラ株のレーティングを「アウトパフォーム(買い)」から「マーケットパフォーム(中立)」に引き下げたという。目標株価は提示されていないとのことだ。
ドシャイマー氏は、トランプ政策の「大きくて美しい」減税法案により10月1日以降に廃止される7,500ドルのEV税額控除について「消費者にとって大きな負担となる」と指摘した。
加えて、トランプ政権が進める大型減税法案により、テスラの総収益の16%を占めていた排出権販売が消滅する可能性もあると分析している。
排出権収益の打撃
前政権下でテスラは、ガソリン車を主力とするフォードやゼネラルモーターズ(GM)など内燃機関車メーカーに排出権を販売し、多額の収益を上げてきていた。2023年の排出権販売で得た利益は28億ドル(約4,089億9,428万円)に上り、テスラの総利益の16%を占めていたという。
ドシャイマー氏はまた、テスラの規制クレジット収益の75%が、今回廃止された燃費規制に関連しているとし、今年第3四半期以降、2027年までにこれらのクレジットが全て消滅するとの見通しを予測している。
テスラ株は取引終了約30分前の時点で、前日比24ドル(約3,505円)7.6%安の291.35ドル(約4万2,557円)で取引されたという。終値で300ドル(約4万3,820円)を下回るのは、先月9日以来とのこと。
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