
ロシアによるウクライナ侵攻が3年目を超え、両国とも兵力確保に苦慮しているという。
ロシアはこれまで、中国やイラン、中東諸国からの外国人傭兵を雇用し、戦争初期には受刑者を動員したことで注目を集めていた。そして今月、新たに外国人も徴兵可能とする法改正を行ったとのこと。
一方、ウクライナは開戦以来、兵力面での劣勢が続いており、ロシアが徴兵事務所を攻撃し兵員動員を妨害していると、米紙ワシントン・ポスト(WP)が9日に報じた。
ロシア側は、長期化する戦争に疲弊したロシア国民の支持を得るため、こうした徴兵妨害を心理戦の一環として活用しているという。
7月初旬だけで5カ所のウクライナ徴兵事務所が攻撃受ける
ウクライナ陸軍司令部報道官のビタリー・サランチェフ大佐は、7月に入ってからすでに5カ所の徴兵事務所が攻撃され、3人が死亡、88人が負傷したと述べ、大半が一般市民だったと明かした。
サランチェフ大佐は、「ロシアの目的は兵力動員プロセスの妨害だ」とし、「市民に不安と恐怖を植え付け、徴兵事務所を『危険な場所』というイメージを作ろうとしている」と警戒感を示した。
ウクライナの徴兵事務所では、兵役年齢の男性登録や徴兵制度の実施、適性評価のほか、体力検査・健康診断・心理検査、さらには訓練配属先の決定などが行われているという。
ロシアは9日夜、ウクライナに対し過去最大規模となるドローンおよびロケット攻撃を実施した。ドローンだけで728機が使用されたとのこと。
前日にドナルド・トランプ米大統領が「多くの人命を奪っている」として、ウラジーミル・プーチン露大統領への不快感を表明したことを受け、攻撃が激化したとの見方もあるという。
「徴兵事務所攻撃、住民も協力」との主張
ロシア側は徴兵事務所を標的とする戦略を認めており、議員や宣伝担当者らは「この攻撃は、新たな兵力確保に反対するウクライナ国民の支持を得ている」と主張していると、WPが報じた。
ロシア下院のアンドレイ・コレスニク議員は、現地メディアのインタビューで「徴兵事務所への攻撃はウクライナ国民の生活を楽にした」とし、「多くのウクライナ国民が事務所の破壊を歓迎していた」と述べた。
ロシア系ブロガーらは、地元住民が攻撃を誘導するために徴兵事務所の座標を公開したと主張している。
また、2023年時点でロシアの人口は約1億4,380万人であるのに対し、ウクライナは約3,773万人と人口規模で大きな差がある。兵力確保が難航し、徴兵を避ける動きもみられるウクライナにとって、ロシアによる徴兵事務所への攻撃はさらなる圧力となっているという。
さらに、アメリカを中心に、徴兵年齢を現在の25歳からさらに引き下げるよう求める声も強まっている。
ウクライナ国家安全保障・国防会議傘下の偽情報対策センター所長アンドリー・コバレンコ氏は、戦争勃発以降、徴兵事務所への組織的な攻撃が行われるのは新たな展開だと述べた。
コバレンコ所長は「昨年は徴兵事務所の入口で爆弾テロを試みたが失敗し、現在はイラン製の自爆型ドローン『シャヘド』を用いた攻撃が行われている」と語った。
また、「こうした攻撃が動員を妨げることはない」とし、「兵役対象となる市民に関するデータの大部分は、すでにかデジタル化されている」と強調した。
最近設置された徴兵事務所には、すでに防空壕や安全な地下施設を備えた場所もあるが、古い事務所の多くは人口密集地域にある一般の地方自治体の建物に設置されているという。
ロシア、外国人徴兵可能に法改正
ロシアは外国人が即座に軍に入隊できるよう法改正を行ったという。
海外メディアはこの法改正について、大規模な追加徴兵なしに戦力を補充しようとする狙いがあると分析している。
タス通信によると、プーチン大統領は今月7日、外国人および無国籍者が「国家非常事態」や「戒厳令」下でなくても、動員令発令時に軍務に就けるようにする法改正案に署名した。
従来の法律では、外国人の入隊は国家非常事態または戒厳令下に限定されていたが、新法では「動員期間」を追加し、現時点でも外国人の徴兵が可能なように改正したという。
ロシアはウクライナ侵攻以降、部分的な動員令を発令しているとのこと。
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