AI同士がデータやサービスを売買する時代が現実味を帯びる中、ドルなど法定通貨の価値と連動するステーブルコインが、AI間取引の主要決済手段として注目されている。
従来の金融システムでは、AI間で行われる高速かつ小口の取引に対応しきれないという理由からだという。海外ではすでに、AIへのリアルタイムで使用料を支払う決済テストも進められている。

市場調査会社ガートナーによると、昨年のグローバルAIエージェント市場の規模は約51億ドル(約7,592億7,902万円)に達したという。AIエージェントとは、AIが人間のように目的を理解し、自ら判断して作業を遂行するAIプログラムとのこと。この市場は2030年には約471億ドル(約7兆120億8,830万円)規模と9倍以上に成長すると予測されている。
AIエージェント市場の拡大が見込まれる中、ステーブルコインの活用度がさらに高まるとの見方が強まっている。
AIエージェントは他のAIサービスと情報をやり取りし、データを購入して対価を支払うという一連の取引を繰り返すが、これに対応する決済インフラの整備が課題となっている。
AIは常時稼働し、リアルタイムで反応するが、既存の決済システムは銀行の営業時間や仲介機関の存在、為替手数料などが障壁となり、取引の遅延やコスト負担が少なくないという。
そのため、従来の決済システムはAIが行う膨大な少額取引に不向きだと指摘されている。
一方、ステーブルコインはブロックチェーン上で運用され、1秒間に数千件の取引を低コストで処理可能となる。手数料はほぼゼロで、仲介業者を介さずにグローバル決済ができるのも特徴だという。リアルタイム決済や自動化が基本となるAI間の商取引にとって、理想的な代替手段として注目されている。
また、法定通貨と価値が連動しているため、ビットコインなど他の暗号資産に比べて価格の安定性も高いとされる。
すでに海外では、AIエージェントとステーブルコインを連携させた実証実験が行われている。
その代表例が、米暗号資産取引所コインベースが開発を進めている「x402プロトコル」であり、AI同士がリアルタイムで商取引を行うために設計された自律型決済システムで、人間の介入なしにAIが自ら決済処理できるよう構築されている。
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