
長年の国境紛争で対立が続くタイとの緊張が高まる中、カンボジアで徴兵制が導入される見通しとなった。
14日(現地時間)、AFP通信によると、カンボジアのフン・マネット首相は同日、中部カンポン・チュナン州の王立憲兵訓練所での式典で、2026年から徴兵法を施行すると発表した。
カンボジア議会は2006年、18歳〜30歳の全ての国民に18カ月間の兵役を義務付ける徴兵法を可決したが、施行されていなかった。女性は志願制とされている。
米中央情報局(CIA)のワールド・ファクトブックによると、カンボジアの軍事要員は軍警を含め約20万人、タイは現役軍人約35万人を擁するという。
フン・マネット首相は国防予算の増額も求めた。2025年度国家予算は93億2,000万ドル(約1兆3,769億8,000万円)で、このうち7億3,900万ドル(約1,091億8,000万円)が国防費に充てられる。
同首相は国境地域でのタイとの衝突に触れ、「この事件は我が国にとって教訓となった。軍を再検討し、評価し、改革目標を設定する機会となった」と述べた。
さらに、現行法で定められている18カ月の兵役期間を24カ月に延長する方針を表明した。「我が軍の目的は他国の領土を侵略することではなく、自国の領土を防衛することだ」と強調した。
タイとカンボジアは、フランスのインドシナ統治時代に確定した約800キロの国境線を巡り紛争を繰り返し、たびたび武力衝突に発展してきた。2008年以降、国境地帯では少なくとも28人が死亡した。
5月28日、両国の国境地域で小規模な銃撃戦が発生し、カンボジア軍人1人が死亡した。この事件を契機に両国間の緊張が続く中、タイのペートンタン・シナワット首相とカンボジアのフン・セン上院議長の電話会談内容が流出し、関係はさらに悪化した。
シナワット首相がカンボジア国境を管轄する自国軍司令官を中傷する発言を行い、この発言が公になると、タイ憲法裁判所は同首相の職務を停止し、罷免審判に着手した。国内では政治的混乱が深まっている。
一方、タイは徴兵制を採用している。徴兵検査は毎年4月に実施され、男性国民のみが対象とされている。
徴集年齢に達した男性に徴集通知が送付され、通知への返信後、国防省が徴集申請を受け付ける制度となっている。兵役期間は志願兵の場合、高卒者は1年、大卒者は6カ月と定められている。
志願兵の募集後、不足分は「くじ引き」で徴集した。徴集対象者が必要人数の3倍を超えるため、抽選で入隊者を決定している。
徴集対象者は箱から赤いカードを引けば現役入隊、黒いカードを引けば免除となる。現役入隊者には2年間の義務服役が課される。
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