ドイツ、廃止したはずの防空壕を復活へ ロシアの空爆懸念で備え強化

ドイツは、冷戦終了後に大規模に閉鎖した地下シェルターの再整備に着手している。ロシアによる空爆の可能性を念頭に置いた対応だ。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ドイツ政府は2029年までに国防予算を約2倍に増額し、本格的な有事対応体制の構築を目指すと報じている。
軍事専門家の間では、今後数年以内にロシアが西欧を攻撃する能力を持つ可能性が指摘されている。ウクライナのように都市が連日の空爆にさらされる事態となれば、数百万人の民間人が無防備な状態に置かれる恐れがある。
こうした懸念を踏まえ、ドイツ当局は地下シェルターの再整備を含む対策に乗り出した。戦車やドローンなどの兵器確保と並行し、民間人の保護策も確実に講じる方針だ。
WSJは、ドイツ当局が低コストで迅速に避難所に転用可能な公共スペースのリストを作成中であり、将来的にはより堅牢な防護施設の建設を計画していると伝えた。また、試験的な取り組みとして、2026年末までに100万人が避難できるシェルターの確保を目指し、その後、避難所の全国的な拡充を進める計画だという。

第二次世界大戦後、ドイツの都市各地に残る灰色の高層防空壕は今も健在で、一部は美術館やホテル、高級住宅などに再利用されている。しかし、大型シェルターの大半は復元に多額の費用と時間を要し、多数の人が集まることで、かえって攻撃の標的となる可能性もある。
こうした点を考慮し、ドイツ当局は地下駐車場や地下鉄駅、建物の地下など、既存の構造物の耐久性を高めて避難所に転用する方針だ。個人の地下室をシェルターとして改造しようとする国民も増えていると、WSJは伝えている。
冷戦期に運用されていた2,000以上のシェルターと避難所のうち、現在残っている施設はわずか58か所。理論上、それらが収容可能な人数はドイツの人口の0.5%にあたる約48万人に過ぎない。
ドイツ政府の報道官はWSJに対し、「ベルリンにある4つのシェルターを含め、残存する避難所はすでに機能を失っており、運用も不可能な状態にある」と述べた。
WSJは「わずか20年前、ドイツは自国領土への軍事攻撃の可能性は極めて低いと判断し、最後に残った空襲対策シェルターを閉鎖した。しかし今日、その決定を覆そうと急ピッチで対策を進めている」と伝えている。
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