
イランは、欧州3か国との核交渉を前に、国際連合(UN)が制裁を再開する場合、核拡散防止条約(NPT)からの脱退も視野に入れていると示唆した。交渉の余地を残しつつ、核交渉で有利な立場を確保するための威嚇とも受け止められている。
イランのカゼム・ガリババディ外務次官(国際担当)は、23日(現地時間)、米ニューヨークの国連本部で記者団に対し、イランのNPT脱退の可能性について「それはまだ議論の対象だ」と述べたと、AFP通信、AP通信、米アクシオスなどが報じた。
さらに、ガリババディ次官は国際原子力機関(IAEA)の技術代表団によるイラン訪問を受け入れる意向を示し、「実質的に2〜3週間以内のイラン訪問を認めることで合意した」と述べ、今回の訪問を通じてIAEAとの新たな関係構築に重点を置くとした。ただし、核施設の現場視察は行わないと付け加えた。
また、先月12日にイスラエルの奇襲攻撃により中止された第6回米イラン核交渉の再開については「早いほど良い」と述べた。この件に関し、米メディアのアクシオスは、ガリババディ次官が先月の第6回米イラン核交渉の日程調整を行う一方で、イスラエルがイランを攻撃した事実にも留意しており、米国の追加軍事行動を望まず、米国を信頼していないとの発言があったと伝えている。彼は、仲介者を通じた間接会談が行われる理由として「我々は米国を信頼していない」と語った。
25日、トルコ・イスタンブールにて、英仏独3か国の外相とイランのアッバース・アラーグチー外相が、国連におけるイラン核関連制裁の再開問題などについて会談する予定だ。すでに、フランスのジャン=ノエル・バロ外相は、イランが8月末までに西側との核合意に至らなければ、2015年に締結された「包括的共同作業計画(JCPOA)」に基づく制裁再開の可能性に言及している。
アクシオスは、国連が制裁再開権限の有効期限が10年を経過し、今年10月中旬に期限切れとなるが、その延長の可能性があると報じた。また、イランに核施設の査察を許可させるとともに、核兵器製造が可能な60%濃縮ウランを他国へ移転させる措置を取らせたいという狙いがあると予測している。
この点について、交渉団の一員であるガリババディ次官は「25日の会談は重要ではあるが、決定的なものではない。合意に至らなくとも時間はまだある」と述べ、また制裁期限の延長に関しては「時期尚早だ」とアクシオスは伝えた。
イランがNPT脱退をちらつかせる脅しは、過去にも何度か行われてきた。2018年に米国が一方的にJCPOAから離脱した後、2019年5月には欧州が制裁再開手続きを始めるか、あるいは国際連合安全保障理事会に問題を付託する場合にNPT脱退を示唆した。また、2020年1月に欧州3か国がイランの核問題を安保理に付託する可能性を示した際にも、脱退の可能性に触れている。海外メディアは、これをイラン国内での結束と交渉力を高めるための戦略と解釈している。

イランのマスウード・ペゼシュキヤーン大統領は、23日にアルジャジーラとのインタビューで、12日間に及ぶイスラエルとの戦争後の停戦維持について「楽観していない」と述べるとともに、平和目的の核開発を継続する意向を示した。
一方、イラン国内各地で、アパート、石油施設、工場などにおいて原因不明の爆発事故が発生している。イスラム革命防衛隊所属の軍人を含むイラン政府関係者3名は、ニューヨーク・タイムズ(NYT)に対し、これらの爆発の背後にイスラエルの関与があるのではないかと疑念を示した。
先月、イランとの戦争後、イスラエル情報機関モサドのダビデ・バルネア長官は、イランに対する作戦の継続を主張した。
注目の記事