
韓国政府が22日に突如、50年以上続けてきた北朝鮮向けの心理戦放送ラジオ・テレビを中止したところ、北朝鮮も同日に妨害電波の送信を停止していたことが明らかになった。韓国の放送中止に対する北朝鮮側の反応とみられている。
韓国政府の関係者によると、北朝鮮は22日午後10時をもって、韓国の北朝鮮向け放送を妨害するために送信していた10の周波数のうち、大半の妨害電波が停止し、現在は2から3波のみが残っているという。
韓国では、イジェミョン政権の発足後、南北間の緊張緩和措置として、国境地帯での拡声器放送を中止したのに続き、「人民の声」や「希望のこだま」などの国家情報院が運営していたとされるラジオ・テレビの北朝鮮向け放送も段階的に停止してきた。
国家情報院は今回、北朝鮮向け放送の中止について異例ながら公式に認めており、同じ22日には北朝鮮も妨害電波を取りやめていたことが確認された。
政府関係者は「北朝鮮には事前に放送中止を通知していなかったため、予想外の対応だった」とした上で、「北朝鮮が韓国の動向を敏感に注視していることが明らかになった」と話している。
政府関係者は北朝鮮向け放送中止の背景について、「昨年1月、北朝鮮が先に韓国向け放送を中止したことへの対応」と説明し、「こうした相互放送は過去には体制対決の象徴でもあったが、現在、我々と北朝鮮では国家体制や能力において比べるものではない」と述べた。その上で「北朝鮮が再び韓国向け放送を再開するようであれば応じるが、韓国から先に北朝鮮向け放送を再開することはないだろう」と強調した。
北朝鮮との対話の見通しについては「現在、北朝鮮は対話に背を向けているが、応じる可能性はある」としながらも、「ただし、すぐに応じるとは考えにくく、拙速な働きかけは行わない方針だ」とした。
そして「まずは軍事的緊張を緩和し、偶発的な衝突を防ぐことが先決だ」とも述べている。
一方で、国家情報院の監察室長に、民主社会のための弁護士会(民弁)クァンジュ・チョンナム支部で支部長を務めたイ・サンガプ弁護士を内定したことについては、「8月末ごろに予定されている2、3級職の人事に合わせ、必要な業務を担える人材を早めに起用した」と説明された。
また、「政務職を除き、外部人材が国家情報院の職員として任命されうるのは監察室長のみであり、透明性を高めるために外部人材を起用した」と述べた。
一部で出ている「前政権下で非常戒厳令に加担した国家情報院職員の摘発を狙った人事ではないか」との指摘については、「監察室長人事は過去の是非を明らかにすることが目的ではない」と否定している。
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