
今年1月にドナルド・トランプ大統領が就任して以来、世界中で強権的指導者によるリーダーシップが主流となっている。社会主義国ではすでに、強権的指導者たちが長期政権の基盤を築き、一党独裁体制下で権力を掌握している。南米では、選挙を通じて左派・右派の強権的指導者が登場し、世界の注目を集めている。
西欧や一部のアジアの民主国家を除けば、むしろ独裁に近い権力構造を持つ国が多数を占めていると言っても過言ではない。中東や東南アジアの多くの国々では、王族が富と経済力を独占し統治しており、イスラム国家も概ね政教一致に近い形で神権支配を行っている。

世界の権力序列、トランプ大統領→習近平国家主席→プーチン大統領
世界の強権的指導者の序列は、各国の国力に比例している。三者とも強いリーダーシップを基盤とした超強力な指導者であり、民主国家の盟主であるアメリカが自国優先主義を掲げ、力を背景に現実主義的な外交を展開している。
G2(米中)としてアメリカの強力な競争相手に成長した中国は、軍事力(核兵器保有など)を除けば世界最強国の風格を保っている。習近平国家主席は、トランプ大統領による一方的な力の誇示に対し、さまざまな形で反発し、対立の姿勢を示している。
「元祖ストロングマン」として上半身裸で馬に乗ったり、氷水に飛び込んだりするなど、強いイメージをアピールするプーチン大統領も、ウクライナ侵攻後に仲介者として名乗りを上げたトランプ大統領に対し、容易には従わない姿勢を見せている。アメリカの意向通りに戦争を止めることはできないという反発のメッセージを発している。
社会主義大国である中国とロシアは「多国間主義」を唱えており、すでにプーチン大統領(就任21年目)と習近平国家主席(就任13年目)が反対勢力を抑え込み、権威主義的な統治を続けている。

南米の独裁者 マドゥロ大統領(左派)とブケレ大統領(右派)
世界の強権的指導者の時代に加わった南米の二国では、左派と右派のそれぞれが強権的な政治を掲げ、圧倒的な支持を獲得して当選した。ベネズエラの左派独裁者ニコラス・マドゥロ(62歳)大統領と、エルサルバドルの右派独裁者ナイブ・ブケレ大統領がその主役である。
両者の政治的イデオロギーは正反対だが、独裁的な国政運営の手法は酷似している。政治的な反対勢力の抑圧や、自らの不正行為に対して司法の裁きを免れるための独裁体制の構築に邁進している。
ベネズエラでは不正選挙の疑惑まで浮上している。ベネズエラ選挙管理委員会(CNE)は、国会議員総選挙の暫定開票結果で与党が82.68%の得票率を得たと発表したが、野党指導部は得票率操作だと主張し、実際の投票率は42.63%ではなく12.56%であったと反発している。
「親米右派」であるエルサルバドルのブケレ大統領も、憲法上の再選禁止条項にもかかわらず、昨年の大統領選に出馬し、85%の得票率で再選を果たした。裁判所の憲法裁判部ですら、「6ヶ月以上大統領として在任した者は10年以内に再出馬できない」という条項を「任期満了6ヶ月前に休職すれば再出馬可能」と解釈した。

3代にわたる世襲体制、独裁の象徴 金正恩委員長
北朝鮮は、いまだに朝鮮時代の王政体制すらも言われるほど、3代にわたる世襲体制をさらに強固なものとしている。金日成氏(祖父)、金正日氏(父)に続き、金正恩北朝鮮国務委員長は就任10年目を迎え、北朝鮮式社会主義国家体制を盤石なものにしている。世界のどの国にも類を見ない独特な独裁国家として評価されている。
金正恩委員長の権力はさらに強まっている。彼は、朝鮮労働党総書記のみならず、朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長、軍最高司令官などの要職を兼任し、世界に向けて核兵器による軍事力を誇示することもいとわない。近年では、娘の金珠愛氏(2013年生)を前面に押し出し、事実上4代目の世襲体制の構築に動いている。
興味深い点として、強権的指導者同士の相互理解があるのか、トランプ大統領は金正恩委員長を「核兵器を保有する良き友人」と呼び、友好的な和解のジェスチャーを示している。しかし、金委員長はロシアとの軍事的関係を強化しつつ、トランプ大統領による直接対話の提案には応じていない。
韓国の慶北(キョンボク)大学のユン・ヨンヒ名誉教授(アメリカ学専攻)は「トランプ大統領が世界に向けて超大国の力を誇示している今、他国もその影響を免れない」と述べ、さらに「強権的指導者たちの影響力と判断力が、世界の平和と安定を左右している」と強調した。
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