
蚊が媒介する「チクングニア熱」が中国で急速に広がっている。広東省だけで確認された感染者はすでに4,800人超。専門家は「まだ広く知られていないが、世界的な健康リスクになりうる」と警鐘を鳴らしている。
感染が集中しているのは、香港と隣接するフォーシャン市やシェンチェン市など南部の都市。いずれも蚊の繁殖密度が高い地域で、調査では21カ所の高密度繁殖地が特定された。なかには成虫や大量の幼虫が確認された場所もある。
現地当局は27日から水辺に魚を放流するなど、大規模な蚊の駆除作業に乗り出した。フォーシャン市では4,200匹の稚魚を湖に放ち、中山公園にも1,000匹を追加投入。魚がボウフラを捕食することで蚊の自然繁殖を抑える狙いだ。
チクングニア熱は、1952年にタンザニアで初めて確認されたウイルス性疾患。ネッタイシマカやヒトスジシマカなどがウイルスを媒介し、人の血を吸う際に感染させる。高熱や激しい関節痛を引き起こし、回復後も関節の痛みが長く続くことがある。
人から人への感染はこれまで確認されておらず、死亡例も報告されていない。ただし、高齢者や心疾患を持つ人は合併症のリスクが高まるため注意が必要だ。現在のところ、確実なワクチンや治療薬は存在していない。
こうした中、アメリカのFDA(食品医薬品局)は世界初となるチクングニア熱ワクチンを先日承認したと報じられている。しかし、すぐに広く普及する見込みは立っておらず、当面は予防策の徹底が求められている。
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