ドナルド・トランプ大統領による継続的な利下げ圧力にもかかわらず、米連邦準備制度理事会(FRB)は7月の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の据え置きを決定した。トランプ政権2期目が発足して以降、5回連続で年4.00~4.25%の金利水準が維持されており、今回も「現行水準が適切」との判断が下された。ただし、今回はFRB理事2人が利下げの必要性を主張し、過去32年で最も大きな内部の意見対立が表面化した。

9月利下げ期待も後退
FRBのジェローム・パウエル議長は30日(現地時間)の定例会合後の記者会見で、「現在の政策金利は緩やかに抑制的な水準だ」とし、「私を含む委員会の大多数は、現在の経済活動が抑制的な政策によって不適切に阻害されているとは見ていない」と述べた。9月の利下げについては、「9月については何の決定もしていない。それまで得られるあらゆる情報を考慮する」と語った。また、労働市場については、「需給は緩やかに減速しているものの、バランスは保たれている」と述べたうえで、「依然として下方リスクが残る」との懸念も示した。
またパウエル議長は、トランプ政権の関税政策により依然として不確実性が高いと指摘し、「上昇した関税は一部商品の価格に明確に反映され始めたが、経済活動やインフレ全体への影響はなお見通しにくい」と述べた。さらに、「インフレ圧力が継続するリスクがあるため、注意深く評価・管理する必要がある」と強調した。
この日の発言は市場ではタカ派的なメッセージとして受け取られ、ダウ工業株30種平均は0.38%、S&P500指数も0.12%下落して取引を終えた。9月の利下げ期待も後退し、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のフェドウォッチによると、FRBが9月に金利を据え置く確率は前日の35.4%から56.8%へと急上昇した。米10年債および2年債の利回りもニューヨーク市場の終盤にかけて上昇傾向を示した。
トランプ氏との対立、再燃か
FRBに対して政策金利を1%水準まで引き下げるよう求め続けてきたトランプ大統領はこの日も自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」に「今すぐ金利を引き下げるべきだ」と投稿した。これは、発表された第2四半期の米国内総生産(GDP)速報値が前期比年率で3%成長を記録し、第1四半期のマイナス成長から反転したことを受けたものとみられる。さらに、トランプ大統領は「FRBは今日ではなく9月に金利を下げると聞いている」とも書き込み、引き続きFRBへの圧力を強めている。
今回のFOMCでは、全会一致の決定には至らなかった。2日間にわたる会合の中で、クリストファー・ウォラー理事とミシェル・ボウマン副議長が政策金利を0.25%ポイント引き下げるべきとの少数意見を表明した。常任投票権を持つ理事が反対票を投じるのは極めて異例であり、『ブルームバーグ』は、複数のFRB理事が少数意見を出したのは1993年以来になると伝えた。
ウォラー氏とボウマン氏はいずれもトランプ第1期政権下でFRB理事に任命された人物であり、今回の意見表明もトランプ大統領の利下げ圧力に呼応した動きとの見方もある。『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』は「ウォラー氏は2週間前から利下げ支持を公言しており、来春のパウエル議長の後任を見据えた布石とも解釈される」と報じた。
また、『AP通信』によると、JPモルガン・チェースのチーフエコノミストであるマイケル・フェローリ氏は「今回の反対表明は経済状況によるというより、次期FRB議長人事への『オーディション』に近い」と指摘した。
今回のパウエル議長による「静観」の決定について、FRBの非公式スポークスマンとされるWSJの記者ニック・ティミラオス氏は、「ギャンブルに近い」と評し、「次回9月FOMCまでの2カ月間に示される雇用・物価データに賭けた判断だ」と説明した。雇用が急速に悪化したり、インフレ率が再び上昇した場合、FRBは対応が後手に回るリスクを承知のうえで、当面は静観するという選択をしたと分析している。
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