
米半導体大手エヌビディアは、中国向けに輸出している人工知能(AI)チップ「H20」に関して中国当局が提起したセキュリティ上の懸念について強く反論し、「自社のチップには一切のバックドア(backdoor)は存在しない」と主張した。
エヌビディアの広報担当者は、「サイバーセキュリティは当社にとって極めて重要な課題であり、『H20』にいかなるバックドアも含まれていない」と明言した。
「バックドア」とは、正規のセキュリティ保護機能を回避して通信ネットワークへ不正にアクセスできる脆弱性を指す。今回の発言は、中国国家インターネット情報弁公室が「H20」にセキュリティ上の問題があると指摘し、エヌビディアに対し技術的な説明と関連資料の提出を求めたことを受けたもの。
「H20」は2023年末、米国による先端AIチップの対中輸出規制を受けて、中国市場向けに新たに設計された製品である。米国が同チップの輸出禁止措置を一部解除した直後、中国当局が調査に乗り出した。
中国国家インターネット情報弁公室は、今回の措置について「インターネット安全法」「データ安全法」「個人情報保護法」など、国内法に基づく正当な対応だと説明しており、自国のインターネットとデータの主権を守るための取り組みであると強調している。こうした動きは、技術の自主自立を加速させる狙いもあるとみられる。
この報道を受け、エヌビディアの株価はニューヨーク市場で約1%下落した。マイクロソフトとメタが好決算とAIインフラ投資拡大を発表し、時間外取引では上昇基調にあった中で、対照的な動きとなった。
香港に拠点を置く調査会社「ガベカル・ドラゴノミクス」のアナリスト、ティリー・ジャン氏は「エヌビディアのチップが中国側にとって交渉のカードとなっており、中国は海外技術への依存を減らし、国産代替の自信を一層強めている」と分析した。
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