
トランプ政権が、希土類および永久磁石の国内生産体制の強化に向けて動き出していたことが明らかになった。『ロイター』および『ブルームバーグ通信』によると、ピーター・ナバロ大統領補佐官(貿易・製造業担当)は先週、関連業界の幹部らと会合を開き、包括的な支援策について協議したという。
ブルームバーグは関係者の証言として、ナバロ補佐官が会合の場で、国内生産促進のための制度設計案を説明したと報じている。議題には、最低価格制度の導入や、電子機器廃棄物の対中輸出禁止などが含まれていたとされる。
希土類は、スマートフォンや家電、自動車、軍事用ミサイルなど幅広い製品の製造に不可欠な素材である。米地質調査所(USGS)によれば、2020〜2023年にかけて米国が輸入した希土類のうち、約70%が中国産だった。こうした状況を受け、政権内では中国依存のリスクに対する懸念が高まっていた。
会合に出席した業界関係者は、「政府は、中国以外の供給源を確保する難しさを十分に理解していた」と語っている。電子機器廃棄物からの永久磁石リサイクルも重要なテーマとなり、米国の廃棄物が中国に流れ、再利用されるのを防ぐため、輸出全面禁止案も浮上したという。
また、会合では米国防総省が6月に発表した、希土類採掘・加工企業「MPマテリアルズ」への4億ドル(約600億円)の出資についても議論された。MPマテリアルズは採掘から精製、磁石製造までを一貫して手がける国内唯一の企業であり、今回の支援によってその戦略的重要性が一層高まったとみられている。
さらに国防総省は、MPマテリアルズの製品を政府が最低価格で買い取る方針も示しており、この発表を受けて同社の株価は急騰。7月31日の終値は61.5ドル(約9,260円)に達し、前週比でほぼ2倍に跳ね上がった。
一方で、一部の業界関係者からは、同社が事実上の市場独占状態に陥り、他社の新規参入や競争を阻害する可能性への懸念も示された。これに対しナバロ補佐官は、「関税や価格制度を通じて、他企業にとっても採算が取れる仕組みを整備する」と述べたとされる。
ナバロ補佐官は会合後の声明で、「MPマテリアルズは、米国が重要鉱物の海外依存から脱却する戦略の中核を担う企業だ」と評価。「私たちの目標は、採掘から最終製品の製造まで、すべてを米国内で完結させるサプライチェーンを確立することにある」と強調した。
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