
米国が3年前にロシアの新興財閥の所有物として押収した3億2,500万ドル(約478億3,000万円)相当の豪華ヨットが、競売にかけられる見通しだ。ロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年2月以降、米国が押収したロシアの豪華ヨットの売却は今回が初めてとなる。
AP通信によると、「アマデア」と名付けられたこの大型豪華ヨットは、2017年にドイツの造船会社が建造したもので、全長は106メートルに及ぶという。船内には8つの客室をはじめ、ジム、スパ、プール、美容室などが完備されており、ヘリコプターの離着陸も可能だとされている。
アマデア号は2022年4月、フィジーの領海に入ったところを、フィジー政府が米国の要請に応じて押収し、引き渡した。当時、米政府はロシアへの経済制裁の一環として、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を支持するロシアの新興財閥が海外に所有する資産の差し押さえを行っていた。
米政府はアマデア号の押収時、このヨットがプーチン大統領の側近で、米国の制裁対象であるスレイマン・ケリモフ氏の所有物だと発表した。しかし、ロシアの石油大手「ロスネフチ」の元CEOであるエドゥアルド・フダイナトフ氏が所有権を主張し、訴訟を起こした。米検察は、フダイナトフ氏は名義貸しに過ぎず、実際の所有者はケリモフ氏だとみている。
フダイナトフ側は今回の競売実施に反発している。フダイナトフ側は「米国以外の国の裁判所で所有権争いが起こる可能性があるため、公正な市場価格で合理的な買い手を見つけられるかどうか疑問だ」と述べた。AP通信によると、来月10日までの今回の競売に参加するには、1,000万ユーロ(約17億1,000万円)の保証金が必要だという。
なお、このヨットはカリブ海にある英国領ケイマン諸島に登録されている。現在は、米国が押収した当時のままの状態で、カリフォルニア州サンディエゴ港に停泊中だ。米国はすでにヨットの維持管理費として数千万ドルを費やしており、当初は迅速に売却し、その資金でウクライナを支援する計画だったが、予定通りには進んでいないとされる。
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